医療費(診察代)の請求と時効援用
病院代にも時効がある
病院の診察代を滞納することは、借金に比べれば多くはありませんが、手術をおこなって医療費が高額になった場合などでは、すぐに支払えないケースもあると思われます。
何かしらの理由で未払いになってしまった医療費についても時効はあります。
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医療費には薬代も含まれます。
医療費や薬代の時効は3年とされています。
ただし、民法改正により、2020年4月1日以降の医療費の場合は5年となります。
よって、すでに3年以上経過している場合は時効が成立しているので、病院や回収業務を委託された債権回収会社から請求が来ても、消滅時効の援用をすることで法的な支払義務を免れることができます。
ここがポイント!
病院などの医療費や薬代は3年で時効になる
時効援用のやり方
3年以上前の医療費であれば時効の可能性があるので、その場合は内容証明郵便で時効の通知を送る必要があり、これを時効の援用といいます。
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援用方法に決まりはありませんが、電話では債務承認の危険がありますし、証拠を残す観点からもお勧めできません。
よって、時効の可能性がある場合は、病院や回収業務を委託された債権回収会社、法律事務所に電話をかけずに、配達証明付きの内容証明郵便で時効の援用をおこなってください。
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以下の条件をクリアーしていれば、当事務所が作成する内容証明郵便によって時効が成立して、医療費の支払い義務が消滅します。
時効が成立する条件
- 3年以上前の医療費である
- 3年以内に支払いを認めるような発言をしたり、書類にサインをしていない
- 10年以内に病院から裁判(訴訟・支払督促)を起こされていない
公立病院の医療費
民間の病院、個人で開業している医院やクリニックなどでの入院や手術の治療による医療費は、民法第170条1号の「医師や助産師の報酬」に該当するので、3年の経過によって消滅時効が完成します。
これに対して、都道府県や市町村その他の国立・公立の病院の場合、保険診療と自由診療のいずれのケースにおいても、地方自治法236条1項、会計法30条による公債権となるので、5年の経過によって時効が完成となるとされてきました。
しかし、平成17年の最高裁判決では、以下のとおり判断が示されました。
「公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるから、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、地方自治法236条1項所定の5年ではなく、民法170条1号により3年と解すべきである」
引用元:最高裁平成17年11月21日判決
これにより、現在では病院が民間であっても国公立であっても、医療費や薬代は3年で時効となります。
ただし、裁判上の請求により判決を取られていると時効期間は10年に延長されます。
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途中で一部弁済や支払義務を認めた場合は債務の承認となり、それまでの時効が中断(更新)します。
ここがポイント!
医療費の時効は民間病院であっても、国公立病院であっても3年
債権回収会社からの請求
医業未収金は、病院の経営にも影響を及ぼすので、最近では滞納医療費の請求を債権回収会社(サービサー)に委託している病院も増えてきているようです。
債権回収会社というのは、法務大臣の許可を受けて債権回収を専門としている民間業者です。
弁護士事務所に回収を委託しているケースもあります。
医療費の請求をしてくる弁護士事務所
ここがポイント!
病院が医療費の請求を債権回収会社や弁護士に依頼しているケースもある
時効が中断(更新)する場合とは
債権回収会社や弁護士事務所から警告書、催告書、法的措置予告通知などの書面が届いても、それだけでは時効は中断(更新)しません。
なぜなら、時効を中断(更新)させるには訴訟や支払督促などの裁判上の請求である必要があるからです。
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時効が中断(更新)するというのは、それまで進行していた時効期間がリセットされ、そこから新たに時効がスタートするという意味です。
単に時効が一時停止するわけではありません。
すでに3年の時効期間が成立している場合でも時効は中断(更新)します。
よって、すでに3年以上経過しているにもかかわらず、催告書が届いたからといって、安易に債権回収会社などに連絡をすると、相手のペースで話が進み、結果として債務の承認をさせられて時効が中断(更新)してしまうので注意が必要です。
債務承認に該当する行為
- 支払を認めるような話をする(支払いの猶予、分割払いのお願いなど)
- 支払を認める内容が記載された書類にサインする
ここがポイント!
すでに3年以上経過している高額な医療費は安易に連絡せず司法書士に相談する
連帯保証人がいる場合
入院費は高額になるので、病院から連帯保証人を要求される場合があります。
連帯保証人が付いている場合、主債務者が時効援用すると保証債務の附従性によって、連帯保証人の支払い義務も消滅します。
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連帯保証人が支払いをしているような場合でも主債務者の時効は中断(更新)しないので、主債務者が時効援用することで、連帯保証人も支払う必要がなくなります。
連帯保証人は主債務の時効援用をすることができるので、主債務者と連絡が取れない場合でも、連帯保証人が主債務の時効援用をおこなうことで、医療費の支払い義務を完全に消滅させることができます。
連帯保証人が裁判を起こされた場合は、主債務者の時効も中断(更新)しますが、その場合の時効期間は連帯保証人が10年になるのに対して、主債務者の時効期間は3年のままです。
よって、連帯保証人の時効期間(10年)が経過する前に、主債務者の時効期間(3年)が経過する可能性があり、その場合は主債務者のみならず、連帯保証人も主債務の時効援用をおこなうことができるとされています。
ここがポイント!
主債務者が時効援用すれば、連帯保証人の支払い義務も消滅する
本人が死亡している場合
患者本人が死亡した場合、原則的に相続人に入院費の支払い義務が承継されます。
その際は、法定相続分の割合に応じて、各相続人が医療費の支払い義務を相続することになります。
これに対して、相続開始後3か月以内に裁判所に相続放棄の申し立てをした場合は、初めから相続人でなかったことになるので、医療費や借金などを含めた一切の遺産を相続しなくてよくなります。
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ただし、相続人の間で特定の相続人が医療費の支払いをする合意をしたような場合は対象外で、裁判所に相続放棄の申し立てをした場合に限られます。
本人の死亡から3か月以上経過している場合であっても、一切の遺産を相続しておらず、病院や弁護士からの請求によって初めて医療費の存在を知ったような場合は、例外的に病院や弁護士の通知から3か月以内であれば相続放棄が認められる場合があります。
相続放棄が認められた場合は、裁判所から発行された相続放棄申述受理通知書のコピーを病院や弁護士に郵送することになります。
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これに対して、相続放棄をしていない場合は、相続人が時効の援用を検討することになります。
よって、本人が死亡している場合は、まずは相続放棄するかどうかを検討して、相続放棄しない(できない)場合に時効の援用を検討することになります。
相続人の対応
【裁判所に相続放棄をしている】
➡ 相続放棄申述受理通知書のコピーを郵送する
【裁判所に相続放棄をしていない】
➡ 相続人が時効の援用をおこなう
ここがポイント!
相続放棄をしていない場合は相続人が時効の援用をおこなう
時効にならない場合
3年以内の医療費は時効にはなりません。
その場合は支払い義務があるので、支払うことができる場合は早めに一括返済した方がよいです。
一括返済できない場合は分割払いできないか、債権者と話し合いをおこなう必要があります。
任意整理
医療費も任意整理の対象になるので、一括返済できない場合は司法書士や弁護士に分割返済の和解交渉をしてもらうことができます。
任意整理における返済期間は3~5年が一般的ですが、医療費の額がそれほど高額ではない場合は、1年以内での返済を要求される可能性もあります。
最終的にどのくらいの条件で和解できるかどうかはケースバイケースですが、基本的に返済期間中の損害金は免除してもらえることが多いです。
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例えば、医療費の残高が36万円の場合、3年返済だと毎月1万円を支払っていくことになり、36回払い支払えば完済となります。
任意整理をおこなった場合、依頼をした時点ですぐに司法書士や弁護士が受任通知を送ることで、自分に対する書面や電話による請求が止まります。
あとは和解が成立するまで一切の交渉を代わりにしてもらうことができるので、一括返済できず自分で債権者と交渉することもできない場合は任意整理を検討されるのがよいと思います。
医療費の場合はカード会社からの借金と異なり、信用情報がいわゆるブラックになることはありません。
ただし、医療費をカード払いにしていた場合は、数ヶ月滞納した時点でカード会社への支払いが延滞している情報が信用情報機関に登録されてしまうのでご注意ください。
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個人再生
医療費以外にも多額の借金があり、そのすべてを現在の収入で支払うことができない場合は、裁判所に個人再生の申し立てをおこなうという選択もあります。
個人再生を申し立てる際は、特定の借入れを除外することができないので、支払ができていない医療費も対象となります。
裁判所で再生計画が認可された場合、基本的に借金が5分の1に圧縮されます(ただし、最低返済額は100万円)。
負債の合計が500万円以下であれば、100万円に圧縮することができ、これを3年(最長5年)の分割で支払っていくことになるので、毎月3万円の支払いに減額することが可能です。
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特にメリットがあるのは住宅ローンを返済している場合です。
個人再生には住宅ローン特則という制度があり、住宅ローンはそのまま返済を続けることで自宅を手放すことなく、それ以外の借金を圧縮することができます。
借りれをした理由は問われないので、ギャンブルや浪費が原因であっても、安定した収入があれば個人再生を利用することができます。
仕事は必ずしも会社員や正社員である必要はなく、自営業者やアルバイト、パートであっても利用することができます。
保有している財産が処分されることもないので、自動車が処分されることはなく、解約返戻金がある積立タイプの生命保険なども継続できます。
ただし、ローン返済中の車はについては所有権留保特約によって、所有権がローン会社があるので、個人再生をすることで車がローン会社に引き上げられてしまいます。
自己破産
個人再生もできない場合は最後の手段として自己破産を検討します。
自己破産の申し立てをおこなって免責が認められた場合は、医療費などを含むすべての借金の支払い義務がなくなります(税金は除く)。
自己破産では、およそ20万円以上の価値がある物が処分の対象となります。
これに対して「査定価格が20万円以下の自動車」や「解約返戻金が20万円以下の生命保険」や「掛け捨てタイプの医療保険」は処分の対象にはなりません。
ただし、不動産を所有している場合は競売にかけられて所有権を失いますが、すぐに出ていかなければいけないというわけではなく、買い手がつくまでは住み続けることができます。
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官報には掲載されますが、戸籍や住民票に破産したことが記載されることもないので、ご近所や周りの親族にバレる可能性も極めて低いと思われます。
医師や弁護士、司法書士等が破産すると資格制限によって仕事ができなくなりますが、サラリーマンや公務員であればそのまま仕事を継続できます。
自己破産は思っている以上にデメリットが少なく、日常生活にも影響はないので、返済できずにどうにもならない場合は自己破産で再スタートを切るのがよろしいかと思われます。
強制執行(差し押さえ)
請求が来ているのに無視したり放置していると、裁判を起こされることがありますが、裁判所から訴状や支払督促が届いたにも関わらず、指定された期日までに対応をしなかった場合は、判決などの債務名義を取られてしまいます。
債務名義を取られると、預貯金や給料を差し押さえられてしまうおそれがあるのでご注意ください。
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一番狙われやすいのがゆうちょ銀行の口座です。
ゆうちょ銀行の口座を差し押さえされると、支店を問わずすべてのゆうちょ銀行の口座が差し押さえの対象になります。
もし、給与の振込先をゆうちょ銀行にしていて、お給料が振り込まれた直後に差押えがあったような場合は、口座に入っている全額が取られてしまいます。
仕事先を知られているとお給料そのものを差し押さえてくることがあり、その場合は毎月継続的に給与の4分の1が取られてしまいます。
あとは自動車や不動産も差し押さえの対象になり、債権者によっては家財道具などの動産を差し押さえてくることもあります。
動産の強制執行では裁判所の執行官が自宅の中まで入って、換価できそうな物があるかどうかを調べられます。
ただし、動産の差し押さえでは何も取られずに終わることがほとんどですが、心理的なプレッシャーはかなりのものです。
よって、強制執行(差し押さえ)をされる前の段階で、弁護士や司法書士に債務整理のご依頼をすることが重要です。
ここがポイント!
時効にならない場合でも放置しない
解決事例
ご自分と同じようなケースがあれば参考にしてください。
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債権回収会社や弁護士事務所から医療費の請求が来てどうしてよいかわからない場合はお気軽にご相談ください。
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