不在者財産管理人の選任申し立て
不在者とは
不在者というのは従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者をいいます。
実務上は行方不明になっているケースがほとんどで、どこにいるのかわかっている場合は不在者とはいいません。
行方不明といっても1週間や1ヶ月程度では不在者とは認定されず、おおむね1年以上は行方不明である必要があります。
ここがポイント!
1年以上行方不明であれば不在者といえる
不在者財産管理人とは
不在者に財産管理人がいない場合、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、家庭裁判所が財産管理人を選任することがあり、これを不在者財産管理人といいます。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外許可を得た上で、不在者に代わって、遺産分割協議に参加したり、不動産の売却などをおこないます。
不在者財産管理人の業務
☑ 不在者の財産管理業務
※財産目録の作成、家庭裁判所への報告など
☑ 遺産分割協議への参加、不動産の売却手続き
※ただし、家庭裁判所の許可が必要
家庭裁判所の権限外行為許可
不在者財産管理人は、不在者の財産の保存(財産の現状を維持するための行為)と目的物または権利の性質を変えない範囲内で利用または改良することができます。
これ以外の行為をおこなう場合は別途、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てをおこなう必要があります。
代表的なものに遺産分割協議への参加がありますが、不在者の財産管理人は不在者の財産を保全するのが本来業務なので、最低でも不在者の法定相続分は確保しなければいけません。
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よって、遺産分割協議の内容が不在者に不利なものである場合には家庭裁判所の許可は得られません。
ここがポイント!
法定相続分以下の遺産分割協議では家庭裁判所の許可が得られない
不在者財産管理人を選任する目的
不在者財産管理人の選任申し立てをする目的には、不在者自身の財産を保全する場合のみならず、遺産分割協議をするにあたって相続人中に不在者がいる場合、不在者に相続放棄をさせる必要がある場合、不在者との共有名義の不動産を売却する場合などが挙げられます。
不在者財産管理人を選任する事例
☑ 不在者自身の財産を保全する
☑ 遺産分割協議をしたいが相続人の中に行方不明の者がいる
☑ 行方不明の相続人に相続放棄をさせたい
☑ 行方不明の者との共有名義の不動産を売却したい
不在者財産管理人の候補者
家庭裁判所に申し立てをする際は、不在者財産管理人の候補者を記入する項目があります。
実務上は不在者と直接の利害関係がない親族が候補者になっていることが多く、そのまま不在者の親族が管理人に就任することも珍しくありません。
候補者を記載しなかった場合は、弁護士や司法書士が管理人に就任することになります。
選任された不在者財産管理人は家庭裁判所に報酬を請求することができ、不在者の財産から支払われます。
ここがポイント!
不在者の親族が不在者財産管理人に立候補できる
失踪宣告制度との関係
失踪宣告の場合は行方不明になってから7年以上の経過が条件なので、失踪宣告の要件を満たさない場合は不在者財産管理人制度を利用するしかありません。
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失踪宣告の要件を満たす場合であっても、不在者財産管理人選任の申し立てをすることができますが、遺産分割協議が目的の場合は、たとえ不在者財産管理人を選任しても最終的には失踪宣告によって遺産分割がおこなわれます。
よって、あとから不在者の生存が確認されて、失踪宣告が取り消される見込みがあるような場合を除いて、初めから失踪宣告の申し立てを選択すべきと考えられます。
ここがポイント!
行方不明から7年が経過していれば失踪宣告を選択するのが原則
不在者財産管理人選任の申立手続き
不在者の利害関係人は、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てをすることができます。
不在者自身の財産を保全する必要があると判断した場合、検察官が申し立てをすることもあります。
申立人
☑ 利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)
☑ 検察官
申立先
☑ 不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所
必要な費用
☑ 収入印紙800円
☑ 切手2000円程度
必要な書類
☑ 不在者財産管理人選任申立書
☑ 不在者の戸籍謄本
☑ 不在者の戸籍付票
☑ 財産管理人候補者の住民票
☑ 不材の事実を証する資料(行方不明者届受理証明書など)
☑ 不在者の財産に関する資料(不動産の登記事項証明書、通帳コピーなど)
☑ 申立人の利害関係を証する資料(親族なら戸籍謄本、金銭消費貸借契約書コピーなど)
不在者財産管理人選任と司法書士
司法書士にお願いした場合、申立書の作成のみならず、添付書類である不在者の戸籍謄本等も取得してもらえます。
親族に適当な候補者がいない場合、司法書士を不在者財産管理人の候補者にすることもできます。
遺産分割協議が目的の場合は別途、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てをしなければいけません。
その場合も申立書の作成だけでなく、遺産分割協議案の作成からその後の各種相続財産の名義変更手続きまで司法書士がおこなうことができます。
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ここがポイント!
不在者財産管理人への就任やその後の名義変更もお願いできる
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