不動産を贈与したときの税金
暦年課税の税率と特徴
相続時精算課税を選択しなかった場合は、原則どおり暦年課税の対象となり、1年間の基礎控除額は110万円となります。
税率については、平成27年の改正により、直系尊属(父母や祖父母など)から20歳以上の直系卑属(子や孫など)への贈与については、特例税率が適用されるようになり、それ以外の一般税率と区分されます。
暦年課税では、110万円の基礎控除を使って、複数回の贈与をおこなうことで、贈与税をかけずに相続財産自体を減少させることができます。
ただし、相続開始前3年以内の贈与は対象外となります。
計算方法
1.その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計する
2.その合計額から基礎控除額110万円を差し引く
3.その残りの金額に税率を乗じる
4.税率を乗じた税額から控除額を差し引く
計算例
※一般贈与財産500万円を取得した場合
500万円 - 110万円(基礎控除額)= 390万円(基礎控除後の課税価格)
390万円 × 20% - 25万円 = 53万円(税額)
【基礎控除後の課税価格 × 税率 - 控除額 = 贈与税額】
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 ( )内は控除額 | 特例税率 ( )内は控除額 |
~200万円以下 | 10% ( - ) | 10% ( - ) |
200万円超~300万円以下 | 15% (10万円) | 15% (10万円) |
300万円超~400万円以下 | 20% (25万円) | |
400万円超~600万円以下 | 30% (65万円) | 20% (30万円) |
600万円超~1000万円以下 | 40% (125万円) | 30% (90万円) |
1000万円超~1500万円以下 | 45% (175万円) | 40% (190万円) |
15000万円超~3000万円以下 | 50% (250万円) | 45% (265万円) |
3000万円超~4500万円以下 | 55% (400万円) | 50% (415万円) |
4500万円超~ | 55% (640万円) |
相続時精算課税の税率と条件
相続時精算課税の特別控除額は2500万円ですが、利用するには一定の条件があります。
なお、2500万円を超える部分については一律20%の贈与税がかかります。
よって、2500万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。
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相続時精算課税が適用される贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありませんが、2500万円の特別控除額は生涯を通じて贈与を受けたすべての財産についての合計額となるので、もし、1年目で2500万円の贈与を受ければ、特別控除額を1年で使い果たすので、2年目以降の贈与には一律20%の贈与税がかかります。
利用できる人
☑ 贈与者(あげる人) ➡ 60歳以上
☑ 受贈者(もらう人) ➡ 20歳以上の子や孫
相続時精算課税の節税効果
相続時精算課税は、2500万円の特別控除額を超える部分については一律20%の税額を支払いますが、贈与者が亡くなった場合に「相続財産」に「贈与財産」を加えて相続税額を算出し、そこからすでに支払った贈与税額を控除して、贈与税と相続税を通じた納税をおこなうのが特徴です。
つまり、贈与をした時に納める贈与税をゼロもしくは少額に抑えることはできますが、最終的には贈与者が亡くなったときに相続税で精算する制度なので、基本的に相続税を安くする効果はないといえます。
これに対して、もともと相続税がかからないようなケースでは、相続時精算課税を利用することで、相続税だけでなく贈与税も支払わなくて済むので利用するメリットがあります。
つまり、相続税の課税対象者においては、相続時精算課税を利用しても、基本的には相続税を安くする効果は見込めませんが、もともと相続税がかからないケースであれば、相続時精算課税を利用することで、2500万円までは贈与税もかからないので、相続税のみならず贈与税も支払う必要がなくなるというわけです。
よって、相続財産が相続税の基礎控除(3000万円+600万円×相続人数)以下であることが明らかであれば、相続時精算課税を利用するデメリットはほぼないといえます。
ここがポイント!
相続時精算課税には基本的に「相続税」の節税効果はない
夫婦間贈与における税金
婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用不動産(または居住用不動産を取得するための金銭)の贈与がおこなわれた場合、一定の条件を満たせば、110万円の基礎控除額に加えて、2000万円の特別控除(配偶者控除)を受けることができます。
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よって、夫婦間の贈与では最大で2110万円の贈与税が非課税となります。
同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか受けることができません。
夫婦間贈与の特例を受けるための条件
☑ 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
☑ 贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産(または居住用不動産を取得するための金銭)であること
☑ 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産(または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産)に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
不動産の贈与と登録免許税
不動産を贈与した場合、法務局に名義変更の手続きをしなければいけません。
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その際に、納めるのが登録免許税です。
贈与による不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税は当該不動産の固定資産税評価額の1000分の20(2%)です。例えば、評価額が1000万円であれば登録免許税は20万円となります。
相続による所有権移転登記にかかる登録免許税は1000分の4(0.4%)なので、相続登記に比べると贈与登記は登録免許税においてもかなり割高といえます。
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不動産の評価額については、市町村役場(東京23区は都税事務所)で固定資産税評価証明書を取得します。
贈与登記の登録免許税
不動産の固定資産評価額 × 2% = 登録免許税額
評価額が1000万円の場合
1000万円 × 1000分の20(2%) = 20万円
贈与と不動産取得税
不動産取得税は、新たに不動産を取得した者に課税され、取得した原因には売買だけでなく贈与なども含まれます(ただし、相続は除く)。
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不動産取得税の税率は、原則的に固定資産税評価額の3%ですが、自己が居住するために中古住宅およびその敷地を取得したような場合、一定の要件を満たしていると大幅に軽減されるため、実際には不動産取得税がかからないか、払っても少額になることが多いです。
よって、贈与された不動産(土地建物、マンション)にご自身が住まわれるのであれば、不動産取得税が大きな負担になることは少ないと思われます。
ここがポイント!
不動産の贈与では不動産取得税は大幅に軽減されることが多い
親子・親族間で著しく低い価格で売買すると・・
贈与税の税率は一般的にその他の税金と比べても割高なので、贈与税を逃れるために形だけ売買を装うケースがあります。
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売買といえるためには実際にお金の移動がなければいけませんし、売買金額も時価と比較して同程度に設定しなければいけません。
よって、親子・親族間だからといって、著しく低い金額で不動産を売買すると、時価との差額分については贈与とみなされる可能性があるのでご注意ください。
なぜなら、親子・親族間との理由で著しく低い金額での売買を認めてしまえば、簡単に贈与税を逃れることができてしまうからです。
ここがポイント!
親子間でも適正価格で売買しなければ時価との差額分が贈与とみなされる
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