支払督促の概要と流れ
支払督促は、金銭等の一定数量の給付を目的とする請求に限られています。
よって、不動産の明け渡しや特定の物などの給付には利用できません。
また、送達の条件として、日本において、かつ、公示送達によらずに支払督促の送達をできる場合に限られます。
なお、公示送達とは、裁判所書記官が送達書類を保管し、送達を受けるべき者が出頭すればいつでも送達書類を交付する旨を裁判所の掲示場に掲示することによっておこなう送達方法です。
なぜ、支払督促で公示送達が認められないかといえば、支払督促が債務者を審尋することなく、簡易・迅速に債務名義を得られる手続きだからです。
もし、債務者が所在不明にもかかわらず、公示送達で督促手続きを利用することができるとすれば、債務者に異議を申し立てる機会を与えないまま、債権者に債務名義を取得することになってしまいます。
では、相手の所在は分かっているけど、相手が支払督促を受け取らない場合はどうなるのでしょうか。
通常の送達は、交付送達といって、郵便局員が債務者に書類を直接交付する方法を取ります。
しかし、債務者があえて受け取りを拒否した場合は、交付送達では書類を交付することができません。
その場合、書留郵便に付する送達という方法を取ります。
これは、裁判所書記官が書類を書留郵便に付して発送する方法です。
書留郵便に付する送達では、実際に債務者が書類を受け取らなくても、書記官が書類を郵便局に差し出し、これが受理されたときに送達があったものとみなされるので、現実に書類が債務者に届いたかどうかを問いません。
郵便に付する送達には
「あなたに対する下記書類は、本日あなたあてに書留郵便に付して発送しましたから通知します。仮にあたなが上記書類を受領されなくても、民事訴訟法107条3項により、本日送達されたものとみなされますので、必ず受領してください」
と記載されています。
よって、債務者とすれば、受け取らないと支払督促が確定してしまうので、異議を出したければ受け取らざるを得ないことになります。
これに対し、債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所もしくは事務所または就業場所がないために、支払督促が送達できない場合は、書記官はその旨を債権者に通知しなければなりません。
債権者は通知を受けてから2ヶ月以内に、別の場所を送達すべき場所として届け出ないと、支払督促を取り下げたものとみなされてしまいます。
もし、債権者が調べた結果、債務者の住所が当該裁判所の管轄区域外であったことが判明した場合は、支払督促の申し立てが却下されることになります。
申し立てをする裁判所は、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所で、債権者の住所地ではありませんので注意が必要です。
審理方法は、支払督促申立書の記載のみで、裁判所は証拠の提出を求めることはできず、また、債務者を審尋することもできません。
債務者の救済は、督促異議手続きによっておこなわれるからです。
支払督促は、債権者から裁判所へ申し立てがあれば、その主張の真偽の審査をすることなく、裁判所書記官が支払督促を発します。
そして、支払督促が債務者に送達されてから2週間以内に債務者から異議の申し立てがなければ、裁判所書記官は、債権者の申し立てにより、支払督促に仮執行宣言というものを付けます。
この仮執行宣言付支払督促の正本と債務者に対する送達証明書があれば、債権者は、執行文の付与を受けることなく、その債務者に対して強制執行をすることができるようになります。
その後、仮執行宣言付支払督促の正本が債務者に送達されてから2週間以内に債務者から異議が出なければ、支払督促が確定し、確定判決と同一の効力をもつことになるわけです。
ここまでの流れをまとめると以下のようになります。
1. 支払督促の申し立て
2. 債務者へ送達 ※債務者が2週間以内に異議を申し立てれば、訴訟へ移行
3. 仮執行宣言の申し立て
4. 仮執行宣言の送達 ※債務者が2週間以内に異議を申し立てれば、訴訟へ移行しますが、その間も強制執行は可能
5. 仮執行宣言付支払督促の確定 ※確定判決と同一の効力
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