賃借人が行方不明になった場合の対処法
アパートなど賃貸をしていると、賃借人が行方知れずになることもあります。
そういった場合、家賃は滞納になりますし、勝手に部屋に入って荷物を処分するわけにもいかず困ってしまいます。
では、どのような手順を踏んで、部屋の明け渡しを請求すれば良いのでしょうか。
賃借人とは連絡が取れませんので、裁判を起こそうにも訴状が相手に届きません。
このような場合、公示送達という制度を使います。
公示送達とは、相手方の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に、相手方が所在不明であることを証明することで、裁判所の掲示場に公示がされ、かつ、官報及び新聞紙にその旨が掲載されるものです。
この掲載から2週間が経過したときに、相手方に意思表示が到達されたとみなされるので、訴状に賃貸借契約の解除と建物の明け渡しを請求しておくことで、行方不明になった場合でも対処することできるわけです。
しかし、建物明け渡しの判決をもらっただけでは、部屋に残った賃借人の所有物を勝手に処分することは許されないので、明け渡しの請求と同時に滞納家賃の請求もしておき、その判決に基づいて、部屋に残った動産の差押競売をし、滞納家賃に充当するという手法を取るという方法があります。
また、平成15年の民事執行法改正により、建物明け渡しの債務名義のみで、目的外動産の簡易な売却が可能となりました。
それまでは、未払い賃料の支払いを命じる債務名義がないと、部屋に残された賃借人の所有物を梱包、搬出、保管したうえで売却する手順を踏まなければいけませんでしたが、上記改正により、建物明け渡しの執行のみを申し立てても、部屋に取り残された所有物を目的外動産として簡易な売却手続きで処分することができます。
実際には、部屋に残された動産類に価値があるようなケースは稀なので、多くの場合では動産執行の併用はされずに、残置動産が処分されることになります。
次に、契約書の中に連絡が取れなくなった場合には、「部屋に残された動産類については所有権を放棄する」といった条項があった場合はどうなるでしょうか。
仮に、こういった条項がある場合でも、やはりそれだけでは勝手に賃借人の所有物を処分することは許されないと考えられますので、やはり、上記のような手順を踏んだ上で処分するのが無難と思われます。
もし、勝手に処分をしてしまうと、賃借人が後から現れた際に、損害賠償請求をされる可能性もありますので注意が必要です。
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