日常家事債務と連帯保証
よくドラマでも蒸発した夫が借りたお金を、残された妻が背負い込んでしまい、一家が借金取りに怯えて暮らしているようなシーンがあります。
似たようなケースで、借金を残したまま夫が死んでしまい、残された家族が借金を背負いこんで、極貧生活をしている等があります。
一昔であればこういったシーンは良く見受けられましたが、最近ではどうなんでしょうか?
私はあまりドラマを観ませんが、最近のドラマでもこういったシチュエーションは皆無ではないのではないでしょうか。
そもそも、蒸発した夫の借金を妻が返済しなければいけないのでしょうか?
道義的には蒸発してしまったとはいえ、夫婦なので残された一方が返済しなければいけないのではないかと思ってしまいます。
しかし、法律上は夫婦は日常家事債務であれば連帯して責任負いますが、日常家事債務に該当しないものについては夫婦だからといって当然に支払義務はありません。
そこで、日常家事債務がどういうものかをみていきたいと思いますが、一般的には食料品、衣料品などの生活必需品や光熱費、医療費、養育費などが該当します。
よって、常識的な金額で購入した衣料品であれば、実際にお店で購入してない配偶者であっても、お店から請求されれば法的に支払義務があることになります。
しかし、ブランド物の高級な衣料品や宝飾品等だと、金額的に日常家事債務には該当しない場合もあるので、一概に支払義務があるとはいえません。
では、貸金業者からの借金(サラ金)は日常家事債務に該当するのでしょうか。
これについては、原則的に日常家事債務に該当しないとされています。
よって、夫が妻の知らない間に借りた借金については、仮に、妻が貸金業者から請求されても法的な支払義務はないといえます。
一般的なサラ金等であれば、借入額も何十万くらいなので連帯保証人を付けずに借入れをすることができますが、金額が100万円を超えるような場合等は、例外的に連帯保証人を要求するところもあります。
もし、妻が自分の意思で貸金業者と連帯保証契約を締結したのであれば、夫の借金が日常家事債務に該当しないとしても、妻には連帯保証人としての支払義務が発生しますので、請求から逃れることはできなくなってしまいます。
ただし、夫が妻の知らない間に勝手に連帯保証人の欄に妻の名前を書き、貸金業者も妻本人に対して、連帯保証契約を締結していなかったのであれば、法的には妻が連帯保証人としての責任を負うことはありません。
仮に、連帯保証人になってしまった場合、たとえ夫婦が離婚してもその責任まで切れるわけではありませんので、離婚後も支払義務は残ってしまいます。
よくあるケースでは、住宅ローンの連帯保証人に妻がなっている場合です。
住宅ローンを借りるときは夫婦仲が良いのが普通なので、夫の借入れに対して、妻が連帯保証人になることは決して珍しいことではありません。
しかし、住宅ローンの支払いは何十年も続き、その間に夫婦仲が悪くなって、離婚してしまうことは現実問題として存在します。
そのような場合、仮に、離婚して元妻が家を出ていったとしても、夫が住宅ローンの支払いを滞ると、元妻に請求がいくことになります。
支払いが滞ると最終的には裁判所による競売手続きに移行しますが、競売手続きで落札される金額は、一般的な市場価格よりも低いので、よほど住宅ローンの残額が少なくなっていないと、競売後も住宅ローンが残ってしまいます。
残額が何百万円もあると現実的に支払えないことも多く、そういった場合は離婚後に連帯保証人になっていた元妻も自己破産せざるを得ないといったこともあるわけです。
仮に、妻に収入があり、自己破産しないでも済むとしても、すでに第三者の手に渡ってしまった昔の我が家の住宅ローンの残金を支払わなければいけないというのは、精神的にもかなりきついと思われます。
「たとえ身内であっても連帯保証人にはなるな」
とはよく言ったものです。
とはいえ、新婚当初の夫婦であれば、何十年も先のことを考えて連帯保証人を断るという人はよほどの変わり者と思われてしまうでしょう。
個人的には、夫婦間の住宅ローンにおける連帯保証はやむを得ないと思われますが、それ以外の通常の借金については、たとえ家族や親せきであっても連帯保証人になるのはやめておいた方がよいと思います。
もし、連帯保証債務でどうにもならなくなってしまった場合、最悪の場合、自己破産も視野に入れないといけないので、お一人で悩まずにお近くの司法書士等に相談してみてください。
当事務所でもこれまでに千葉県を中心に連帯保証債務の相談を多数受けておりますので、お気軽にご相談ください。
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