任意後見と居住用財産の処分
任意後見は、自分の判断能力が減退もしくは喪失した後における
1. 後見事務の内容
2. 後見をする人
を自らが事前の契約によって決めることができる制度です。
つまり、任意後見制度は、現時点においては判断能力を有する人が、将来、判断能力が不十分になったときに備えて、
自分の希望する後見事務の内容と後見事務を任せる人をあらかじめ任意代理の委任契約によって決めておく制度です。
そして、実際に判断能力が不十分になったときには、家庭裁判所に後見監督人の選任をしてもらい、その監督人の元で自分が希望した任意後見人に後見事務をおこなってもらいます。
このため、法定後見よりも後見を受ける人の自己決定権が尊重されているといえます。
任意後見と似た制度に財産管理委任契約というものがあります。
この2つの大きな違いですが、財産管理委任契約は契約締結後すぐに効力が発生するのに対し、任意後見はあくまでも本人の判断能力が減退して、家庭裁判所が後見監督人を選任した時点で効力が発生するという点です。
よって、いまだ判断能力が減退はしていないが、すぐにでも自己の生活、療養看護、財産管理等の事務を一部でも委任したいのであれば、まずは財産管理委任契約を締結しておいて、
合わせて、判断能力が減退した場合に備えて、任意後見契約を締結しておくのがベターといえます。
では、任意後見で委任できる代理権の範囲は無制限なのでしょうか?
答えはNOです。
なぜなら、任意後見契約は判断能力が不十分な本人の生活、療養看護または財産の管理に関する事務に限定された委任契約だからです。
よって、委任できる範囲も本人の生活、療養看護、財産の管理に関する法律行為に限られ、日常生活における身の回りの世話等は対象外です。
ところで、法定後見における財産の管理は通常、保全型の静的な財産管理ですが、任意後見では本人の意思次第で活用型の動的な財産管理も可能です。
そのため、任意後見では原則として居住用不動産を家庭裁判所や後見監督人の許可なく処分することも可能です。
とはいっても、不動産は一般的に資産価値が高く、特に居住用ともなれば本人の生活にも重大な影響を与えるので、実際には任意後見監督人と相談しながら後見事務を進めていく必要があります。
また、当初から(居住用)不動産等の重要な財産の処分行為をする際には、個別に後見監督人の同意を書面で要する旨の特約を付けておくことも可能です。
この際、単に重要な財産とだけ記載しただけでは、何が重要な財産で何が重要な財産ではないのかが不明確であるので、対象となる財産を具体的に記載しておくことをおススメします。
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