後見人による贈与

法定代理人である成年後見人には、財産行為について包括的な代理権があります。

 

そのため、形式的には被後見人の代理人として贈与をする権限もあることになります。

 

しかし、成年後見人の業務は、被後見人の利益を守り、身上を監護することにあります。

 

よって、基本的に被後見人の利益になることはない贈与行為は、成年後見制度の趣旨から考えると、原則として認められないものといえます。

 

仮に、節税対策のための贈与であっても同様です。

 

もし、後見人が本人に不利益な贈与をした場合、権限の濫用となることもあり、

 

その結果、民法93条但書の類推適用により、当該贈与行為自体が無効となるケースも考えられます。

 

もし、このような権限の濫用といえる贈与行為をおこなったことで、本人に損害が生じた場合、

 

後見人にその損害を賠償する責任が生じる可能性があり、そういった場合には家庭裁判所が後見人を解任することも考えられますので、基本的に贈与行為は控えるべきです。

 

とはいえ、実際に社会生活を営んでいると、冠婚葬祭等でお祝い金や香典を出すこともあります。

 

成年後見が開始した後であっても、本人の立場や後見開始前の意思等を推察すれば、お祝い金や香典を出すべきと考えられるケースも少なくないと思います。

 

また、後見が開始した後であっても、本人が逆にお見舞金等をもらうことも考えられます。

 

よって、後見開始後であっても、本人の意思や財産状況等を考慮して、社会生活を送る上で常識的な範囲内と考えられる程度であれば、相手方との関係でお見舞金等を送ることは許されると考えられます。

 

これは、病院や入所先の施設の職員等に対する謝礼についても同じことがいえますが、注意を要するのは公的な施設の職員に対する謝礼の場合です。

 

なぜなら、公的な施設の職員が相手の場合、服務規律違反や贈賄罪という問題が生じる恐れがあるからです。

 

よって、相手が公的な機関の関係者である場合は、原則どおり贈与はおこなわない方が無難といえます。

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