財産管理と投機的取引

成年後見人の職務は、財産管理と身上監護の2つです。

 

後見人には、包括的な財産管理権が与えられ、本人の全ての財産に対して管理権が及ぶことになります。

 

たとえば、本人の預貯金等を管理して、本人が入所している施設等への支払いをしたり、もし、本人が不動産を所有していれば、その管理等をおこないます。

 

具体的には、固定資産税等を支払い、建物であれば屋根や外壁の修繕、維持、保存が管理の中心的事務になります。

 

不動産を賃貸している場合には、借主に対する賃料請求や家賃の受領もおこないますが、積極的に新たな事業用不動産を取得して不動産事業をおこなうことは原則認められません。

 

また、本人が所有する不動産を売却することも可能ですが、居住用不動産(かつて自宅であった場合を含む)の売却に関しては、

 

家庭裁判所の許可が必要になり、もし、許可を受けないで不動産を売買しても、売買の効力はありません。

 

また、自宅以外の不動産であっても、後見監督人が選任されている場合は、監督人の同意が必要になります。

 

なお、本人宛の郵便物については、後見人が管理すべき物とそうでない物に分かれます。

 

まず、親族や友人等からの郵便物やダイレクトメールの類は、事実行為の内容になるので、後見人の管理対象とはならないと考えれます。

 

これに対して、役所や金融機関からの郵便物については、単なるお知らせを除き、後見人の管理が必要な郵便物といえます。

 

なぜなら、役所からの納税通知等の郵便物を放置していると、本人に損害を与えてしまう可能性があるからです。

 

このように、後見人には本人が有する財産の保存や維持が主な仕事になります。

 

これに対して、本人の財産を積極的に増やそうとするような投機的な取引については、後見人であっても原則的におこなってはならないとされています。

 

なお、ここでいう投機的取引というのは、単に利殖を目的としたもので、いかなる投機的取引が禁止されているわけではありません。

 

たとえば、本人の入所施設への支払金に充てるために、どうしても株を売却する必要があったり、保有している株の暴落が明らかであるような場合には、後見人は本人の所有する株を売却することができます。

 

しかし、単に利殖を目的としている株取引は、本人の利益になる保証がなく、むしろ本人の財産を減少させてしまうおそれがあります。

 

こういった趣旨から、FX取引等の元本保証のないような取引全般については、後見人であってもおこなってはならないと考えられます。

 

もし、後見人の独断で投機的取引をして、本人に損害を与えるようなことがあれば、後見人の職務違反行為とされ損害賠償責任を負う可能性もあるので注意が必要です。

 

 

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