財産分与の請求手続きと親権者の指定
離婚の際に、一方当事者(主に夫)から他方当事者(主に妻)に財産上の給付がなされることがあり、これを財産分与といいます。
財産分与によって、一般的に経済力の弱い妻の離婚後の生活の安定と、当事者間の衡平が図られます。
財産分与の手続きについては、まずは当事者間の協議によるので、夫婦のどちらが何をどのくらい分与するかについては、話し合いで自由に決めることができるのが原則です。
もし、話し合いが成立しなかったり、話し合い自体ができないのであれば、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停といっても、あくまでも裁判所での話し合いなので、調停が成立しない場合は審判の申し立てをすることになります。
なお、いきなり審判の申し立てをすることはできません。
よって、いきなり審判を申し立てても、まずは調停に付されます。
この離婚調停を申し立てる際に、財産分与を併せておこないたいのであれば、付随的申立てとして財産分与の請求が可能です。
もし、離婚については合意が成立していたり、調停で離婚だけが成立した場合でも、財産分与が当然に審判に移行することはないので、調停離婚が成立した後に、改めて財産分審判の申し立てをする必要があります。
なお、財産分与の請求は、必ずしも離婚の手続きと同時にする必要はなく、離婚後に財産分与の請求だけをすることも可能です。
たとえば、夫が離婚自体には応じるが財産分与には応じない場合、まず離婚の手続きを完了させて、その後、財産分与だけを請求するといった場合です。
ここで注意を要するのは、財産分与の請求は離婚が成立した後2年以内にしなければならないという点です。
ただし、離婚の際に財産分与請求や慰謝料請求をしないという取り決めをした場合は、権利を放棄したことになります。
よって、たとえ2年以内であっても、あとから請求することはできません。
相手が離婚に応じていて財産分与の額が主な争点である場合や、離婚を先にしてしまうと誠実に財産分与の協議に応じてもらえない可能性があるのであれば、離婚と財産分与の申し立てを同時にした方がよいケースではありますが、まずは離婚を先にしたい場合や訴訟での手続きを避けたいのであれば、離婚後に財産分与の請求をしても良いのではないかと思われます。
なお、当然のことですが、離婚が成立する前に財産分与の申立を先にすることはできません。
最後に、離婚と過払い金の関係ですが、特に離婚をして氏名や住所が変わっていても問題はありません。
実際に、完済をしてから数年が経過した後で、ご相談を受けることも多いですが、そういった場合、当時と名前や住所が変わっている場合は決して珍しくありません。
そういった場合、借入をしていた当時の氏名や住所を教えて頂く必要がありますが、当然、貸金業者に返還請求する権利がなくなるわけではありませんのでご安心ください。
未成年の子に対する親権は、夫婦が婚姻中であれば夫婦が共同で行使するのが原則です。
これに対し、離婚する場合は共同で行使するわけにはいかなくなりますので、どちらか一方を親権者に指定しなければいけません。
つまり、日本では離婚後は単独親権制度を採用しているわけです。
なお、親権には財産管理権と身上監護権が含まれており、財産管理権とは未成年の子がおこなう法律行為の代理権のことで、身上監護権には居所指定権、懲戒権、職業許可権、身分行為の代理権等があります。
協議離婚の場合、離婚をするときに同時に親権者の指定をしなければいけないとされており、これを離婚と親権者指定との同時解決の原則といいます。
協議離婚であれば、役所に離婚届を提出することになりますが、その離婚届の中に親権者を記載する欄がありますので、そこで親権者の指定をしておく必要があります。
このように親権者の指定が離婚の要件になっているので、もし、親権者の指定のない離婚届出が提出されても受理されません。
ただし、役所が誤って離婚届けを受理してしまった場合は、たとえ親権者の指定がされていなくても、その離婚届は有効なので、親権者の指定がされるまでの間は共同親権にならざるを得ないとされています。
これに対し、裁判上の離婚では、裁判所が父母の一方を親権者と指定することになります。
裁判離婚において離婚を認める場合には、その附帯事項として判決主文の中で親権者を指定するわけです。
親権者の指定に関しては、その性質上裁判所の職権でおこなうものとされているので、仮に、当事者からの申し立てがなくても、裁判所が指定します。
実務上は、当事者の意向を尊重されることが多いですが、裁判所は当事者の申し立てに拘束されるわけではないので、子の利益のためと判断すれば当事者の意向とは逆のもう一方の親を親権者に指定することができます。
親権者の指定の際は、子の福祉が重要視されますが、一般的には子が10歳未満であれば母が親権者として指定されることが多いです。
ただし、母が子を虐待している等の特別の事情があるのであれば、父が親権者に指定されることもあります。
なお、未成年の子が15歳以上の場合は、その子の意見を聞かなければいけないとされているので、15歳以上であれば当事者の意向が反映される可能性が高いです。
最後に、調停離婚、審判離婚の場合です。
調停離婚も審判離婚も家庭裁判所でおこなわれる手続なので、基本的には裁判離婚と同じと考えられます。
ただし、調停離婚の場合、親権者の指定に関して、
「後日、子の意向を尊重したうえで当事者間で協議して決定する」
と調書に記載することも有効とされているので、そういった場合は親権者が指定されるまでの間は共同親権になります。
ところで、離婚前であれば話し合いで親権者の指定ができますが、離婚後に親権者の変更をする場合は、必ず裁判所に親権者変更の調停もしくは審判を届け出る必要があります。
基本的には、まずは話し合いの調停で親権者の変更を検討し、調停が不成立となれば自動的に審判手続きに移行します。
審判手続きでは、一切の事情を考慮したうえで裁判所が親権者の変更を認めるかどうかの判断をおこなうことになります。
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