離婚における財産分与と親権者の指定

離婚の際には、必ずしも慰謝料をもらえるわけではありません。

 

慰謝料というのは、不法行為による損害賠償の一形態で、そこには加害者と被害者が予想されており、一般的には加害者から被害者へ支払うものです。

 

しかし、離婚の場合、交通事故と違って、必ずしも加害者、被害者という立場が明確でない場合があります。

 

よって、離婚といっても一概に夫が加害者で、妻が被害者とは言い切れません。

 

もし、夫が妻に暴力をふるったとか、一方の異性関係が離婚原因であれば、加害者と被害者の立場が鮮明になりますが、たとえば、性格の不一致、相手の家族や親族との不仲が原因である場合は、一概にどちらが悪いとはいえず、慰謝料の算定も非常に困難となります。

 

また、協議離婚の場合は、慰謝料の支払いを約束せずに離婚することも少なくありませんので、その意味でも離婚に慰謝料は付いてくるものとは言い切れません。

 

なお、離婚の際は慰謝料と財産分与がごちゃ混ぜになって支給されることも少なくありませんが、この点、最高裁は財産分与と慰謝料を区別する立場を取っています。

これは、財産分与に慰謝料の要素が含まれていたときは、重ねて慰謝料の請求をすることはできないとの判断もしているので、財産分与の中に慰謝料が含まれる場合もあるという考えです。

 

つまり、裁判所の考えでは、財産分与の中に慰謝料の要素が含まれているのであれば、改めて慰謝料の請求はできないが、仮に、慰謝料の一部が含まれていたとしても、その額や支払方法が精神的苦痛を慰謝するのに足りないと認められれば、別途、不法行為を理由に慰謝料の請求をすることができるというというものなので、もし、財産分与をするのであれば、それが慰謝料の要素を含むのかどうかを明確にしておくことが大切です。

 

このように、慰謝料を請求するには一方に不法行為があったことが条件になりますので、慰謝料は離婚に際し必ずしも認められるものではありませんが、財産分与は、夫婦財産の清算、離婚後の生活扶助が目的なので、どちらか一方に責任がなくても(例えば妻の不倫が原因で離婚しても)、結婚中に生み出した財産があるのであれば、不倫をした妻から夫に財産分与の請求をすることができます。

 

これに対し、妻が過去の婚姻費用を夫に請求することがありますが、これは夫が十分な生活費を渡さなかったがために、その不足分を妻が働いて支払ったような場合に、妻が過当に負担した生活費を、離婚に際し夫に請求するものなので、婚姻費用の請求はたとえ財産分与と慰謝料をそれぞれもらっていても、別途、請求することが可能です。

 

なお、慰謝料の算定はケースバイケースなので、裁判になった場合でも、裁判官が自由裁量により、公平の観念に従い、諸般の事情を考慮して算定します。

次に、親権者の指定についてみていきます。

父母が婚姻中は、子の親権は父母に帰属し共同で行使するのが原則ですが、婚姻が離婚により解消されたときは共同で親権を行使するのは不適当なので、どちらか一方を親権者と決めなければいけません。

 

つまり、日本では、離婚後は単独親権制度を採用しているわけです。

 

そのため、協議離婚であっても裁判離婚、調停離婚、審判離婚のいずれの場合でも、親権者を指定しなければいけません。

 

具体的には、協議離婚では事前にどちらが親権者になるのかを話し合いで決めて、離婚届に親権者を記入しなければならず、未成年の子がいるにもかかわらず、親権者の記載のない離婚届では受理されません。

 

裁判離婚の場合は、裁判所が父母の一方を親権者と指定します。

 

つまり、離婚を認める判決を出す際に、その附帯事項として判決の主文で親権者も指定するわけです。

 

なお、どちらの親を親権者に指定するかは裁判所が当事者の意向に拘束されることなく判断しますが、実際には当事者の意向を尊重する方がこの利益に合致する場合が多いと思われます。

 

また、未成年の子が15歳以上である場合は、その子の意見も聞かなければならず、裁判所はこの意見を尊重したうえで、どちらか一方を親権者に指定します。

 

もし、子の福祉のために不都合な事情が生じた場合には、一度決めた親権者をもう一方の親に変更したり、親権喪失の宣言を得たりすることができます。

 

しかし、親権はあくまでも未成年の子の利益、福祉のために存在するので、いずれの場合も子のために必要であると認められた場合でなければいけません。

 

たとえば、当初は妻を親権者として離婚したが、妻が次々と違う男を家に連れ込むなどしているような場合、夫は家庭裁判所に親権者の変更を申し立てることができます。

 

これ以外にも、親権者が行方不明であったり、実際に養育していない、養育する意思が認められない、子に暴力をふるう、養育環境の劣悪、親権濫用等の事情が該当します。

 

つまり、親権者よりもう一方の親に監護教育させた方が、この利益、福祉にかなうと積極的に認められる場合に、親権者の変更が認められるというわけです。

 

親権の変更が認められた場合は、家庭裁判所の調停もしくは審判の謄本を持って、市区町村役場の戸籍係に届出をする必要があります。

 

ところで、離婚により姓が変わっても、過払い金の返還請求をすること自体には全く影響がありません。

 

その場合は、相手業者に旧姓と現在の姓を併記して通知することで、同一人物かどうかが分かりますし、離婚に伴い、住所が変更しているのであれば、旧住所と新住所を併記しておけば請求には全く影響はありません。

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