遺留分減殺請求
兄弟姉妹を除く相続人には遺留分があります。
しかし、遺言の内容が遺留分を侵害していたとしても、それだけで遺言が無効になることはなく、遺留分を侵害された相続人からの請求があって、はじめて減殺されることになります。
では、実際のところ、遺留分の減殺請求をするにはどうしたらよいのでしょうか。
この点、遺留分減殺請求権は形成権とされています。
つまり、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、相手方に対する意思表示で足りるというわけです。
そして、相手方に対する意思表示がなされると、遺留分を侵害する贈与もしくは遺贈の効力は、その限度で失効し、減殺請求権の対象物の権利が遺留分権利者に帰属することになります。
なお、減殺請求の方法については口頭でも構いませんが、後日の証拠として内容証明郵便でおこなうのが確実です。
次に、減殺の順序ですが、たとえば減殺請求の対象となる遺贈と贈与が併存している場合等では、一定の順序が決められています。
まず、数個の遺贈と贈与がある場合は、まず遺贈を減殺し、それでも不足があれば贈与を減殺します。
また、遺贈が数個ある場合には、原則的に各遺贈の目的の価額に応じて減殺されるので、遺留分権利者が特定の財産を選択して減殺請求することはできません。
これに対して、贈与が数個ある場合は、後の贈与から順次、前の贈与に及びます。
なお、死因贈与については、贈与と同様に取り扱うことになり、しかも贈与の中でも一番最初に減殺されます。
以上をまとめると
遺贈 ⇒ 死因贈与 ⇒ 生前贈与
の順で減殺されることになります。
減殺請求の対象が特定物であれば、現物の返還が原則となりますが、受贈者が目的物を他人に譲渡した場合は、遺留分権利者にその価額を弁償しなければいけません。
価額弁償をすることで目的物返還義務を免れることができますが、これは遺留分権利者の権利保護と取引の安全とのバランスを取ったものです。
同様の趣旨から、減殺請求を受けた受遺者もしくは受贈者は、遺留分権利者に価額弁償をすることによって現物返還義務を免れることができます。
次に、減殺請求権の消滅についてですが、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ってから1年を経過すると時効により消滅します。
また、減殺請求者が相続開始の事実を知らなくても、相続開始から10年の経過で消滅します。
なお、ここで消滅の対象となるのは、あくまでも減殺請求権そのものであり、期間内に減殺請求をしてあれば、目的物の返還請求権等は上記の期間経過でも消滅しません。
最後に、遺留分減殺請求の登記手続きですが、すでに相続登記が経由された後に、遺留減殺を原因とする登記手続きは、遺留分権利者と登記名義人である受遺者等の共同申請となります。
登記原因証明情報としては、遺留分減殺請求をしたことを証する書面の他に、遺留分権利者が相続人であることを証明するための戸籍謄本等を提出します。
また、遺留分減殺請求とはいっても、その実質は相続による承継ですから、仮に、対象不動産が農地であっても農地法の許可は不要となります。
これに対して、遺留分権利者が同意したうえで価額弁償に代わって減殺の目的物の価額に相当する物を提供する、いわゆる代物弁済を農地でおこなう場合には、
登記原因は遺留分減殺による代物弁済となり、その実質は相続とはいえないで農地法の許可書が必要とされています。
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