遺言執行者による特定遺贈

遺言で第三者に特定物を贈与することを特定遺贈といいます。

 

不動産が遺贈の対象である場合、遺言執行者は

 

1. 当該不動産の所有権を受遺者名義に移転すること

 

2. 当該不動産を受遺者に引き渡すこと

 

の上記2点をしなければいけません。

 

不動産の遺贈を第三者に対抗(主張)するには、登記名義を受遺者に変更する必要があります。

 

遺贈の登記申請は、登記権利者である受遺者と、登記義務者である遺言執行者との共同申請となります。

 

この点、相続登記が相続人による単独申請であるのと大きく異なります。

 

なお、遺言執行者がいれば、相続人は遺言執行の権限を有しないため、登記義務者が遺言執行者となりますが、

 

もし、遺言執行者がいなければ、相続人の全員が登記義務者となりますので、相続人が複数名いる場合には、遺贈の登記申請は大変になります。

 

その意味でも、相続人が多数にのぼるような場合には、あらかじめ遺言で遺言執行者を指定しておくことをおススメします。

 

遺言執行者がいる場合の添付書類としては、

 

1. 検認済証明書付遺言書原本もしくは公正証書遺言

 

2. 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

 

3. 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票

 

4. 遺言執行者の印鑑証明書

 

5. 受遺者の住民票

 

6. 登記済証または登記識別情報

 

なお、遺贈の登記は遺言者から受遺者に直接所有権が移転するので、相続人名義へ経由する必要はありません。

 

ただし、遺産の全部もしくは一部を売却し、その売却代金すなわち現金を遺贈するという内容の遺言の場合、遺言執行者は、相続財産を相続人の名義で処分することになります。

 

登記手続きとしては、遺言執行者が単独で被相続人名義から相続人名義に相続登記をおこない、その後、遺言執行者と買受人との共同申請で移転登記します。

 

ところで、農地が遺贈の対象となっている場合はどうでしょうか。

 

農地の所有権を移転する場合には、原則的に知事の許可が必要になります。

 

しかし、包括遺贈であれば、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされていることから、農地であっても知事の許可は不要です。

 

これに対し、特定遺贈の場合は、農地の移転が効力を発生するには知事の許可が必要になります。

 

もし、知事の許可が得られない場合、他に特段の事情がなければ、その遺贈は不能といえるので効力を失います。

 

次は、不動産の引渡です。

 

もし、特定遺贈の対象である不動産に、抵当権等の担保権や第三者の地上権等が設定されていても、遺言執行者はそのままの状態で引き渡せば足ります。

 

ただし、遺言者がそれらの権利を消滅させる義務を遺言執行者に課していた場合はそれに従います。

 

不動産の次は、預貯金の遺贈です。

 

預金債権を受遺者に移転するには、預金名義を受遺者に変更する方法が代表的です。

 

具体的方法は各金融機関によって異なりますが、一般的には被相続人の死亡および遺言の効力発生を証明するために、

 

各金融機関所定の死亡届と被相続人名義の除籍謄本を提出することが多いです。

 

金融機関は、この届出を受けると、預金の引き出し等の処分行為を停止し、相続人からの個別の請求による解約には応じなくなります。

 

その後、名義変更をするにあたり、金融機関に提出する書類は一般的に以下のとおりです。

 

1. 承継届出(払戻依頼)書

 

2. 遺言書

 

3. 遺言者の除籍謄本および住民票除票

 

4. 預金通帳

 

5. 届出印(金融機関によっては不要の場合もあります)

 

6. 受遺者および遺言執行者の印鑑証明書

 

いずれにせよ、事前に各金融機関に問い合わせされることをおススメします。

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