成年被後見人の印鑑登録|後見人の結婚祝い、香典の支出

成年被後見人の印鑑登録や結婚祝い、遺言信託と遺言書保管制度の解説

これまでは成年後見人は印鑑登録をすることができませんでした。

つまり、裁判所で成年後見人が選任されると、印鑑登録が抹消されて印鑑証明書の交付を受けることができなくなっていました。

そのため、被後見人名義の不動産を売却する際は、裁判所が発行する後見人の印鑑証明書が利用されてきました。

しかし、法改正によって、2020年(令和2年)から一定の条件のもとに、後見人も印鑑登録ができるようになりました。

後見人が印鑑登録できる条件

  • 印鑑登録申請に成年後見人が最後まで同行する
  • ご本人に印鑑登録の申請意思があることを確認ができる

印鑑登録するには、本人と後見人の双方が役所に赴く必要があります。

よって、片方だけの来庁では印鑑登録はできません。

また、印鑑登録のすべての手続きが完了するまで後見人の同行が必要です。

ご本人、後見人の双方ともに、印鑑登録の手続きを他の第三者に委任することはできません。

印鑑登録に必要なものは以下のとおりです。

後見人の印鑑登録に必要な物

  • 登録する印鑑
  • 成年被後見人の本人確認書類
  • 法定代理人(成年後見人)の本人確認書類
  • 成年後見の登記事項証明書(発行日から3カ月以内)または審判確定証明書原本
  • 登録手数料(300円)

本人確認書類は、運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、パスポート、身体障害者手帳など官公所が発行した顔写真付きの身分証明書であれば1点で大丈夫です。

ただし、後見人の本人確認書類と登記事項証明書に記載されている住所、氏名が一致しない場合は申請することができないのでご注意ください。

各種保険証、年金手帳、本人名義の預金通帳、医療機関の診察券などしかない場合は、2点以上必要になります。

詳しくは管轄の役所に確認されるのが確実です。

成年後見人が選任されると、後見人は本人の財産を維持することが仕事になります。

あわせて読みたい

よって、後見人は本人の財産を第三者に贈与したりすることはできません。

とはいえ、本人が通常の社会生活を営むために必要な出費については、支出してOKです。

たとえば、結婚祝い香典は常識の範囲内であれば、後見人が支出してもOKです。

つまり、何が何でもNGではなく、常識の範囲内の支出はOKというわけです。

また、被後見人は日用品の購入やその他日常生活に関する行為であれば、後見人の同意なくおこなうことができます。

例えば、シャンプーや日々の食材の買い物などは、後見人になっても自由におこなうことができます。

これは、少額の買い物まで後見人の取消権の対象にしても、本人の財産保護を害することはありませんし、本人ができることは可能な限り、本人におこなわせるという後見制度の趣旨にも合致するからです。

また、商品を売るお店側からしても、少額の買い物についてもあとから取り消しされたのでは、今後、後見人に売るのを躊躇するようになってしまいます。

よって、後見人が選任されたからといって、日常生活に欠かせない日々の買い物などは制限されることはありません。

次は、遺言信託とはどういったものかをお話しします。

遺言信託は一言でいえば、信託銀行による遺言書の作成、保管に関するサービスのことです。

あわせて読みたい

つまり、信託銀行遺言書の作成に関する相談作成した遺言書の保管に加えて遺言の執行をしてくれるわけです。

遺言の執行とは遺産を遺言 の内容どおりに受け取らせる手続きのことです。

あわせて読みたい

ここまでみると、信託銀行にお願いすれば安心のような気もしますが、ネックなのは手数料です。

手数料は、信託銀行によって異なりますが、契約時の基本手数料だけで、少なくとも10~30万円はかかります。

また、遺言執行の手数料は、遺産の金額によって変わりますが最低でも110万円かかります(遺言執行の費用は執行後の支払となります)。

よって、遺言信託は、遺言書の書き方から保管、執行まで安心して頼めますが費用が高額なのがネックです。

こういったことから、現実には一部の富裕層の利用が大半と思われます。

遺言書の保管については、2020年(令和2年)からスタートしています。

これは自筆証書遺言を法務局が保管してくれる制度です。

法務局による遺言書保管制度の主なメリットは以下のとおりです。

遺言書保管制度のメリット

  • 申請段階で法務局に遺言書の形式ルールをチェックしてもらえる
  • 遺言書の原本が法務局で保管されるので偽造や紛失のおそれがない
  • 遺言者が死亡したら相続人に通知される
  • 裁判所で検認の手続きをする必要がない

遺言書保管制度では、法務局に申請をする段階で、遺言書が形式的なルールを守っているかチェックされます。

もし、ルール違反があれば、その場で指摘されるので、遺言書があとからルール違反で無効になる心配がありません。

法務局のチェックを受けているので、公正証書遺言と同様に裁判所で検認の手続きをする必要もなくなりました。

あわせて読みたい

遺言書の原本は本人の死後50年間、画像データは150年間は保存されるので、偽造などの心配もありません。

また、本人が死亡した場合は、事前に登録された相続人にその事実と遺言書がある旨が通知されるので、これまでのようにせっかく遺言書を作ったのに発見されないといった心配もなくなりました。

よって、なるべくお金をかけずに遺言の内容を実現したい場合は、遺言信託よりも法務局による遺言書保管制度を利用されるという選択もあります。

無料相談 受付中!

無料相談

受付時間:平日9時~18時
電話番号:043-203-8336