相続放棄の3か月の熟慮期間の起算点はいつ?
相続放棄の期限は3か月!熟慮期間はいつから進行するの?
熟慮期間と伸長の申立て
相続放棄は相続開始後3ヶ月以内にしなければいけないのが原則です。
つまり、相続開始後3か月が経過すると、原則的に相続放棄をすることができなくなります。
この相続放棄の期限を「熟慮期間」といいます。
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熟慮期間は長いようで意外と短いです。
よって、海外に在住しているとか、遺産が膨大で調査に時間がかかるような場合は、裁判所に熟慮期間期間の伸長の申し立てをおこなうことができます。
伸長が認められた場合、熟慮期間が1~3か月程度延長されます。
ただし、最終的に熟慮期間の伸長を認めるかどうかは裁判所の裁量によります。
また、伸長が認められるかどうかの審査に1~2週間程度かかるので、熟慮期間の満了直前に伸長の申し立てをおこなうのは避けた方が安全です。
なぜなら、伸長が認められなかった段階で熟慮期間が経過していると、相続放棄の申立てができなくなるおそれがあるからです。
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先順位の相続人がいる場合の熟慮期間
相続開始後3か月というと一般的には被相続人が死亡した日から3か月と思いがちです。
確かに、同居している家族の夫が亡くなって相続人がその妻と子どもであれば、相続が開始したことは明らかですから、特に起算点を気にすることはありません。
ただし、必ずしも被相続人の死亡日が熟慮期間の起算日にならないケースがあります。
それは先順位の相続人全員が相続を放棄したような場合です。
相続人には順位があり、第1順位は子ども、第2順位は両親などの直系尊属、第3順位は兄弟姉妹で、配偶者は常に相続人になります。
被相続人に子どもがいない場合は両親、兄弟姉妹の順で相続人となります。
よって、先順位者である子ども全員が相続放棄しない限りは、第2順位以降の両親や兄弟姉妹が相続人になることはありません。
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被相続人が多額の借金を残して亡くなったような場合、第1順位である子どもが相続放棄をした際に、次順位の相続人である両親や兄弟姉妹が相続放棄をする際の熟慮期間の起算点はいつになるのかが問題となります。
この点、法律上の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」としています。
しかし、これだけではよくわかりません。
もう少しわかりやすく言うと、現在の判例や通説では以下の2つの事実を知った時から熟慮期間がスタートするとされています。
自己のために相続の開始があったことを知った時とは
- 被相続人が死亡した事実を知った時
- 自分が相続人になった事実を知った時
上記の例で、両親や兄弟姉妹は第1順位の相続人である子どもが相続放棄をしたことを知らない限り、自分が相続人になるとは思いません。
よって、次順位の相続人は被相続人が死亡した事実だけでなく、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知った段階で、初めて相続放棄の熟慮期間がスタートします。
3か月過ぎても相続放棄が認められる場合
子どもがいない夫婦の夫が死亡し、その相続人が妻と被相続人の兄弟姉妹であるような場合、被相続人には初めから子どもがおらず、すでに両親も他界していたのであれば、被相続人の死亡の事実を知った時点で兄弟姉妹が相続人になることが分かります。
被相続人の妻がすでに相続放棄をしたにもかかわらず、その事実を兄弟姉妹に告げていなかった場合でも、配偶者の相続放棄の有無にかかわらず兄弟姉妹は相続人です。
よって、3ヶ月の熟慮期間経過後に相続人である兄弟姉妹が初めて借金の存在に気づいたとしても、上記の熟慮期間の起算点の原則に当てはめればすでに3ヶ月が経過しているので、相続放棄をすることは認められません。
ただし、これにも例外があります。
それは、昭和59年の最高裁判決において、相続人が熟慮期間の起算点の大原則である上記1.2.の各事実を知った場合でも、①3ヶ月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全くなかったと信じたためであり、かつ、②被相続人の生活状況や被相続人との連絡状況等を考慮して、相続人に被相続人の財産を調査することが著しく困難で、相続人に全く財産が存在しないと信じたことについて相当の理由がある場合、熟慮期間は相続人が相続財産の存在を認識したときから起算すべき、と判断されたからです。
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そのため、もし、上記の例で被相続人とその兄弟姉妹が通常の付き合いをしていたのであれば、3ヶ月以内に財産調査をすれば借金の存在を知ることができたはずなので、原則どおり3ヶ月経過後の相続放棄が認められない可能性があります。
これに対して、生前、被相続人と兄弟姉妹が仲違いをして全く連絡を取っていなかったような事情があったために、被相続人の死亡後もその財産状況を知る手がかかりが全くなかったといえるのであれば、3ヶ月経過後であっても債権者からの通知等で被相続人に借金があることを初めて知ったのであれば相続放棄が認められる可能性があります。
実務上は、相続放棄を却下すべき明らかな事情がなければ、3か月を過ぎていても受理されることが多いです。
とはいえ、最高裁判決はあくまでも熟慮期間の例外なので、被相続人の死亡の事実と自分が相続人になった事実を知った場合は、そこから熟慮期間がスタートすると考えて相続放棄をするかどうかを決めるのが安全です。
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