相続にまつわる諸問題
被相続人が、遺言を書いていなかった場合、相続人の間で遺産分割協議をおこなうことになります。
しかし、当事者同士の話し合いでまとまるとは限りませんので、家庭裁判所を利用することも珍しくありません。
その場合、最終的には訴訟に発展するかもしれませんが、調停前置主義に基づき、まずは家庭裁判所に調停の申し立てをする必要があります。
申し立て後は、相続人全員(もしくはその代理人)が調停の場に集まり、話し合いをすることになります。
ところで、遺産分割をする前の大前提として、相続人を確定させる必要がありますが、これは被相続人の出生してから亡くなるまでの戸籍をすべて取り寄せる必要があります。
相続人の確定が終わったら、次に、遺産分割の対象となる遺産の範囲を確定します。
なお、生命保険金は、保険料を対価とする保険会社との保険契約によって生じる権利なので、遺産分割の対象とはなりません。
よって、被相続人に多額の借金があるような場合に、たとえ、相続人が相続放棄をしても、保険金は被相続人の責任財産ではないので、保険金を受け取ることができます。
また、特定の相続人が、被相続人から生前に遺贈を受けたり、婚姻や生計資本のために贈与を受けている場合は、それらの遺贈や贈与を特別受益としたうえで、相続人間の公平を維持するために、特別受益を考慮して遺産分割をすることになります。
特別受益にあたるものとして、婚姻や養子縁組の際の持参金、支度金、結納金や、学費、留学費用、居住マンションの購入費や賃料等の生計資本が挙げられます。
なお、生命保険金や死亡退職金等は、相続財産に含まれないので、原則的には特別受益に該当することはありませんが、例外的に保険受取人である相続人とその他の相続人との間に生じる不公平が、到底是認できないほどに著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益に該当することもあり得ます。
特別受益に対し、寄与分というものもあり、これは被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合に、その寄与分を金銭的に評価し、その寄与に相当する金額や遺産の割合を本来の相続分に加えることによって、相続人間の公平を図ります。
寄与分と認められるには、普通の寄与では足りず、特別の寄与である必要があります。
特別の寄与に該当するためには、特別の貢献性、無償性、継続性の3つの要件を満たす必要があります。
その上で、寄与行為と被相続人の財産の維持または増加に因果関係があることも要求され、そのような寄与をもたらす行為の態様として、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護が例示されていますが、これ以外の行為でも認められる可能性があります。
ただし、単に被相続人に精神的慰安を与えたのみでは寄与分とはならないということになります。
次に、遺言書がある場合ですが、この場合は、相続人は遺言書に従わなければいけません。
しかし、相続制度には、遺族の生活保障や遺産形成に貢献した潜在的持分の清算という側面もあるので、絶対に遺言書の内容どおりでなければいけないとなると、相続人の中には納得できない思いをする者も出てきます。
そのような、被相続人の財産処分の自由と相続人の保護を両立するために遺留分制度が存在します。
遺留分減殺請求権の行使の仕方については、受遺者もしくは受贈者に対する裁判外の一方的な意思表示で足りるとされていますが、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないか、もしくは相続開始時から10年が経過すると遺留分減殺請求権は消滅してしまいます。
よって、遺留分を侵害されているかどうかが不確定であっても、相続開始後1年以内に配達証明付の内容証明郵便で、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をしておくのが安全です。
とにかく、相続が発生したら、まずは遺言の有無を確認し、相続人を確定したうえで、遺産の範囲を知ることが重要です。
【参考】
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