仮登記の種類
仮登記というのは、将来なされる本登記の順位を事前に確保しておくためになされる登記です。
仮登記自体には、民法177条が規定する対抗力はありませんが、後日、本登記をすることで仮登記から本登記までの間に生じた第三者の権利の登記を自己の権利と抵触する範囲で否定することができます。
この仮登記には2種類あります。
ア. 1号仮登記
イ. 2号仮登記
1号仮登記は、条件不備の仮登記と呼ばれています。
つまり、登記すべき権利変動はすでに生じているのですが、登記申請に必要な条件が揃わないときに、あらかじめ順位を確保しておくためになされる仮登記です。
具体的には、
1. 登記義務者が登記申請手続きに協力してくれない場合
2. 登記義務者の登記識別情報(登記済証)を提供できない場合
3. 第三者の許可、同意、承諾を要する場合で許可等は得られているが、その許可等を証する書面の提供ができない場合
次に、2号仮登記ですが、これには請求権保全の仮登記と条件付権利の仮登記の2つのタイプがあります。
請求権保全の仮登記というのは、当事者間においていまだ登記すべき権利変動が生じていないが、将来その権利変動を生じさせる請求権が法律上発生している場合に、あらかじめ登記上の順位を保全するためにおこなわれます。
たとえば、売買予約や抵当権設定の予約がなされた場合で、将来、予約完結権を行使することで物件としての所有権や抵当権を取得することができるので、あらかじめ順位を確保しておくために仮登記をしておくわけです。
条件付の仮登記は、登記すべき物権変動が一定の条件にかかる場合に、条件が成就するまでの間の権利保全としてなされる登記です。
たとえば、農地について売買が締結された場合、農地法所定の許可がないと所有権移転の効力が発生しないので、この許可を得ることを条件として所有権移転仮登記をすることになります。
なお、抵当権設定の仮登記はできますが、共同根抵当権設定仮登記は認められていません。
これは、共同根抵当権が設定と同時に共同担保の定めを登記することによって初めて根抵当権となるからで、登記が効力要件とされているからです。
そして、この登記というのは本登記に限られているので、2号仮登記のみならず、1号仮登記であっても認められません。
これらの仮登記の申請手続きですが、原則的に共同申請となっています。
添付書類としては、登記原因証明情報、登記義務者の印鑑証明書で、登記識別情報(登記済証)、登記権利者の住民票、第三者の許可等を証する書面は不要です。
仮登記で不要とされた書類については、本登記の際に提出されればよいという考えです。
貸金業者が不動産担保を取った際には、抵当権ではなく根抵当権を設定する場合が多いですが、その場合は上記のとおり、仮登記が認められていないので本登記をせざるを得ません。
これに対して、抵当権設定の仮登記は認められていますので、条件付抵当権設定仮登記がされていることがありますが、こうすることのメリットは登録免許税になります。
というのも、抵当権の場合、債権金額の1000分の4が登録免許税になるので、1000万円だと4万円の登録免許税を納める必要がありますが、これが仮登記だと1000円で済むからです。
つまり、抵当権者側からすると、仮登記をすることで順位を保全することができ、しかも、登録免許税も安く済むので、あえて抵当権設定の本登記をせずに仮登記にしておくというケースもあります。
なお、不動産担保の案件であっても利息制限法を超える高金利であることは珍しくないので、引き直し計算をすればすでに過払いになっているのであれば、その返還請求も可能です。
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