登記原因証明情報の提出

不動産登記法では、登記原因証明情報を申請情報と併せて送信しなければならないと規定しています。

 

実際には、登記原因証明情報をスキャナ等でPDFファイルにして、申請情報と併せて送信し、書面で作成された登記原因証明情報は、その他の添付書面と一緒に法務局へ提出します。

 

なお、PDFファイルにした際には電子署名は不要となっています。

 

なぜ、登記原因証明情報をわざわざPDFファイルにして申請情報と送信しなければならないのかといえば、空登記の防止が目的です。

 

不動産登記では、申請情報の提供がなされた順番通りに受付順位が付けられ、その登記の前後によって権利の順位が決まります。

 

たとえば、登記原因証明情報をPDFファイルで送信する必要がないとなると、順位の確保だけを目的にして、とりあえず空登記を申請することで順位を確保することが可能となってしまいます。

 

つまり、いまだ登記原因証明情報が完成していないにもかかわらず、先に申請だけしてしまって、受付順位が確保できてから登記原因証明情報をその他の添付書面と一緒に提出するという手口を防止するために、申請の段階でPDFファイルを要求しているわけです。

 

こういった趣旨から、順位の確保を気にする必要がない登記名義人の表示変更、更生登記等は、本来であれば登記原因証明情報として住民票や戸籍謄本をPDFファイルにして送信すべきところ、

 

順位確保による空登記の恐れがない種類の登記申請との理由で、申請情報と一緒にPDFファイルで送信せずに、その他の添付書面と一緒に法務局に提出すればよい取扱いになっています。

 

ところで、PDFファイルで送信する登記原因証明情報は、その後に提出する登記原因証明情報と同一のものでなければいけないとされています。

 

たとえば、抵当権設定登記の際に、報告書形式の登記原因証明情報をPDFファイルで送信したにもかかわらず、

 

登記所に提出した登記原因証明情報が抵当権設定契約書そのものであった場合は、同一書面でないため却下されてしまいます。

 

なお、各種契約書を登記原因証明情報としてPDFファイルで送信する場合、すべてのページを送信しなけばいけないとなると申請代理人の負担が大きくなるので、登記原因の内容を明らかにする部分についてだけでよいとされています。

 

よって、売買契約書であれば、①契約当事者、②契約年月日、③対象不動産、④売買契約により所有権が移転したことが分かる箇所、⑤売買契約締結の事実、が含まれていれば、それ以外の細かい約款の箇所は不要となります。

 

また、契約書を登記原因証明情報としてPDFに送信した場合でも、その内容がその後、登記所に提出した契約書の内容と異なれば却下となりますが、

 

登記原因の発生に影響のない部分の修正程度であれば却下されることはないと思われます。

 

では、登記原因となる書面が多岐にわたる場合、どこまでの書面をPDFファイルにして送信する必要があるのか。

 

たとえば、相続登記では登記原因になる書面としては、遺産分割をしているのであれば遺産分割協議書、戸除籍謄本等が該当しますが、

 

戸除籍謄本をすべて送信するとなるとかなりの量になり、容量制限を超えて送信自体ができない恐れもあります。

 

そこで、戸除籍謄本等を原本関する場合には相続関係説明図を添付する必要がありますが、実務上はこの相続関係説明図をPDFファイルで送信すれば、その他の戸籍等は送信不要という取扱いになっています。

 

つまり、相続関係説明図に遺産分割や特別受益といった記載があれば、戸籍や遺産分割協議書、特別受益証明書等も添付不要というわけです。

 

もちろん、これらの書類も添付書面として法務局に提出する必要はあります。

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