抵当権の抹消手続き
家を購入した場合、通常は住宅ローンを組んでいるので、自宅には抵当権が設定されます。
無事にローンが終わると、銀行等から抵当権の抹消書類を渡されます。
抵当権は、返済が終わったからといって自動的に消えるわけではないので、これらの書類を法務局に提出する必要があり、そうすることでようやく抵当権が登記上抹消されるわけです。
また、この抵当権抹消登記を銀行がやってくれるわけではなく、基本的には自分で申請するか、もしくはお近くの司法書士にお願いすることになります。
抵当権の抹消登記の手続き自体は、さほど難しいものではないので、自分でやれないことはないと思いますが、それでも一般の方にはわからない点も多いと思います。
そこで、抵当権抹消登記を申請する際に気を付けなければいけない代表的なポイントを紹介します。
まず、自分の氏名もしくは住所が当時と変わっている場合です。
この場合、抵当権抹消登記の前に、氏名もしくは住所の変更登記をしておかなければいけません。
これは、抵当権抹消登記の申請では権利者として自分の住所氏名を記載する必要がありますが、事前に住所氏名を変更しておかないと、登記上の住所氏名の表示と申請書上の住所氏名の表示が一致しなくなってしまうからです。
よって、こういった場合は、①氏名もしくは住所変更登記、②抵当権抹消登記の順に申請する必要があり、実務上はこの2件の登記を連件で申請することになります。
これに対し、抵当権者の商号もしくは本店が変更されている場合は、抹消登記の前提として変更登記をしなくても良いとされています。
なぜかというと、抵当権者の変更登記を申請したとしても、その後、すぐに抹消登記されてしまうので、わざわざ変更登記をするメリットがないからです。
ただし、変更登記はする必要がなくても、変更したことが分かる書類を抹消登記に添付しておく必要があります。
変更証明書を付けておかないと、登記上の抵当権者の表示と申請書の表示に食い違いが生じ、抵当権者の同一性が分からなくなってしまうからです。
次に、紛らわしいのが抵当権者である銀行等が合併している場合です。
単に、銀行名が変わったり、本店を移転したのであれば変更証明書を付ければ、別途、変更登記は不要ですが合併している場合は少しややこしくなります。
通常、抵当権者が合併した場合、抵当権の移転登記をする必要があります。
しかし、抹消登記をする場合に、合併を原因とする抵当権移転登記が必要なのかどうかは、合併をした時期によって異なります。
まず、住宅ローンなどの被担保債権が返済された後に抵当権者である銀行等が合併した場合です。
この場合は、抵当権移転登記をすることなく、合併後の銀行等が申請人となって抹消登記を申請することができます。
なぜなら、合併前にすでに抵当権はローンの完済によって消滅しており、実体上は合併後の会社に抵当権が移転していないからです。
ただし、この場合でも合併したことを証明する書類は付ける必要があります。
これに対して、抵当権者の合併後に住宅ローンを返済した場合です。
この場合は、抹消登記の前提として合併を原因とする抵当権の移転登記をする必要があります。
なぜなら、合併によっていったん抵当権が合併後の会社に移転し、その後に抵当権が完済によって消滅したからです。
このように、不動産登記では権利変動の過程を忠実に公示する必要があるので、合併後に返済が終わった場合は、①移転登記、②抹消登記の順に申請しなければいけません。
最後に、抵当権設定者である自宅の所有者が亡くなった場合に、抹消登記の前提として所有権移転登記をする必要があるのかどうかです。
この点、相続による所有権移転登記は、遅かれ早かれしないといけないので、通常は相続による所有権移転をしたうえで抵当権の抹消登記をするのが一般的です。
とはいえ、登記手続き上は、所有者が亡くなったのが住宅ローンを返し終わったの前か後かで、移転登記を省略できるかどうかに違いがあります。
考え方は抵当権者である銀行等に合併があった場合と同じです。
つまり、住宅ローンを完済した後に所有者が亡くなった場合は、移転登記をしないでも相続人からの申請で抹消登記を申請することができます。
もし、相続人が複数いる場合、そのうちの1人からの申請でもOKです。
これに対して、完済する前に相続が発生した場合、権利変動の過程を忠実に反映する必要があるので、相続登記を申請したうえで、抹消登記をする必要があります。
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