共有物分割禁止の登記
民法では、共有物分割禁止の定めが規定されており、それによると共有者が、共有物について分割を望まない場合は、5年以内の期間内であれば分割をしない旨の特約を設定することができるとされています。
期間については5年が上限とされており、仮に、それより長い期間を定めても無効です。
なお、共有物分割禁止の定めは更新することが可能ですが、更新期間も5年が上限となります。
不動産登記において、共有物分割禁止の定めをした場合には、その旨の登記が可能です。
ところで、所有権の移転登記の際に、一括して不分割の特約の登記を申請することができるかどうかですが、これについては
1. 所有権一部移転 ⇒ 〇
2. 所有権移転 ⇒ ×
という取扱いになっています。
具体例を挙げると、A単独所有の不動産の一部をBに移転するのと同時に不分割の特約を定めた場合は、所有権一部移転登記を申請する際に特約条項として不分割を規定することができます。
これに対して、A単独所有からB、Cへ所有権移転登記を申請する際に、たとえBC間で不分割の合意がされていたとしても、所有権移転登記と一括して不分割の特約を申請することはできません。
この場合、AからB、Cへの所有権移転登記後に、BC間で所有権変更登記を申請し、不分割の特約を登記することになります。
その際の登記申請人は共有者全員が登記権利者権登記義務者となります。
これは、共有物分割禁止の定めにより、共有者全員が利益を受けると同時に不利益を受け、利益と不利益の関係が明確ではないので、共有者全員を登記権利者権義務者にして申請させる必要があるからです。
また、利害関係人がいる場合には、その者の承諾書が必要となります。
不分割の特約によって、利害関係を持つ場合として考えられるのは、例えば共有持分のみに抵当権等を設定した担保権者等です。
これに対して、共有物全体に設定されている抵当権者等は利害関係人にはならないとされています。
ただし、利害関係人の承諾が得られなかった場合でも、不分割の登記自体は可能で、その場合は本来の付記登記ではなく主登記でなされます。
この辺の区別が容易にできるように、利害関係人がいないか、もしくはいても承諾書の添付ができる場合の目的は「何番所有権変更(付記)」と記載します。
なお、共有物不分割の登記は所有権に関する登記で、共有者全員が登記権利者権義務者になるので、原則どおり、登記済証もしくは登記識別情報と印鑑証明書の添付も要します。
以上が、共有物分割禁止の登記の概要ですが、当職も10年以上実務をしていますが、実際にこの登記を申請したことはありませんし、登記されている物件を見たこともありません。
よって、実務上はほとんどお目にかかることはない類の登記ではありますが、もし、千葉近郊にお住まいの方で不分割の特約を登記したいという方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。
なお、登記申請を受任した際は、ご本人様との面談義務がございますので、あまりにも遠方の方だと交通費等のデメリットが発生しますので、できればお近くの司法書士が良いかと思われます。
ただし、千葉近郊にお住まいであれば、たとえ不動産が遠方であっても問題ございませんので、ご不明な点は何なりとお申しつけください。
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