抵当権抹消登記の際に住所や氏名が変更している場合

抵当権抹消登記と住所等変更登記の解説

住宅ローンをすべて返し終えると、銀行から抵当権抹消登記に必要な書類一式をもらえます。

この書類を元に自宅に設定されている抵当権を抹消しなければ、住宅ローンを完済しても登記上は抵当権がいつまでも残ってしまいます。

抵当権抹消登記は銀行がやってくれるわけではなく、自分でやらなければいけません。

最近は法務局での相談窓口もずいぶん親切になったので、時間があれば自分で申請することも十分可能と思います。

ただし、自分でする時間がなかったり、やり方がよくわからないという場合は、一般的には司法書士事務所にお願いするのが安全で確実です。

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費用は事務所によって異なります。

報酬以外に不動産1個につき1000円の登録免許税がかかるので、土地建物1つずつの抹消登記であれば、事前の登記事項の調査や登記完了後の登記事項証明書の取得費用や郵送費込みで2万円くらいです。

マンションなどの集合住宅の場合は敷地権が設定されていることが多いですが、登録免許税は敷地権1つあたり1000円かかります。

よって、敷地権が大量にあるような物件だと、稀に報酬よりも登録免許税の方が多くなる場合があります。

不動産所有者の住所が当時と変更している場合は、抵当権抹消登記の前に住所変更登記をしなければいけません。

この報酬も抹消登記と同じく1万円くらいが相場で、登録免許税も不動産1つあたり1000円です。

もし、不動産が2つで住所変更と抹消登記を司法書士にお願いした場合は3万円くらいが相場です。

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抵当権抹消登記をしない間に、所有者に相続が開始してしまった場合、抵当権抹消登記の前提として相続登記をしなければいけません。

相続登記は不動産の固定資産税評価額の1000分の4が登録免許税なので、2000万円の評価額の相続登記であれば登録免許税は8万円になります。

これ以外に報酬がかかりますが、一般的な相場は5~10万円くらいです。

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相続人が複数いて、法定相続分と異なる配分にしたい場合は遺産分割協議書を作成する必要があります。

遺産分割協議は相続人全員の話し合いが条件で、話がまとまったら遺産分割協議書を作成して、それに相続人全員が署名押印(実印)し、印鑑証明書を添付する必要があります。

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住宅ローンを完済したら、すみやかに抵当権の抹消登記をするのが原則です。

いつまでも抹消登記をしないと、登記上はずっと抵当権が残ったままとなり、もし、売却をしたくても抹消登記が完了していない限りは売却することができません。

極端な話ですが、抵当権を抹消せずに何十年も経ってしまうと、その時には抵当権者の行方がわからなくなっている場合もあります。

そういった場合、その抵当権を抹消するには通常よりも面倒な手続きが必要になり、登記費用も相当かかります。

銀行から抹消書類を預かった場合、その銀行の代表者の資格証明書が入っているのですが、その有効期限は3ヶ月です。

よって、銀行から書類を預かったら資格証明書の有効期限がいつ切れるのかを確認し、少なくともその期限前には法務局に申請する必要があるわけです。

次に、住所等の変更登記についてみていきます。

不動産登記実務では、登記名義人の住所や氏名の変更は非常に重要です。

もし、登記名義人の住所が変更しているにもかかわらず、住所変更登記を申請しないで売買登記を申請した場合は却下されてしまいます。

よって、地味ではありますが、登記名義人の住所や氏名変更登記には細心の注意を払う必要があるわけです。

これまでは住所変更登記に期限はありませんでしたが、所有者不明土地問題の解消を目的として、2026年(令和8年)4月から住所氏名変更登記が義務化されます。

義務化によって、住所や氏名の変更から2年以内に登記を申請する必要があります。

これは施行日以前の住所変更にも適用されます。

よって、施行日前に住所や氏名を変更している場合は、2028年(令和10年)3月末までに住所氏名変更登記を申請する必要があります。

正当な理由なく住所氏名変更登記をおこなわなかった場合は、5万円以下の過料に処せられる可能性があるのでご注意ください。

住所変更登記の義務化のポイント

  • 住所や氏名を変更した場合は2年以内に変更登記をしなければいけない
  • 過去に住所氏名を変更している場合にも適用される
  • 正当な理由なく住所氏名変更登記をしないと5万円以下の過料に処せられる

登記名義人の氏名等の変更または更正登記について事例を通してみていきたいと思います。

破産管財人による任意売却のケース

一つ目は、破産管財人が破産者所有の不動産を任意売却することがあります。

その際に、破産者の現住所と登記上の住所が異なる場合、住所変更登記を申請する必要があります。

ただし、この変更登記の申請人は破産者ではなく破産管財人となります。

これは、破産財産の管理処分権は破産管財人に属するからです。

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離婚による復氏のケース

離婚による復氏のケースです。

民法767条第2項では、協議離婚によって婚姻前の氏に戻っても、離婚から3ヶ月以内であれば、離婚しても婚姻時の姓を名乗ることができると規定しています。

そこで、婚姻時の姓がAで、婚姻前の旧姓がBの場合、登記上の姓がAであれば、離婚後3ヶ月以内にAの姓に戻せば、氏名変更登記をする必要があるのかないのかが問題となります。

というのも、婚姻によって姓が変わった者は、離婚によっていったん旧姓に戻り、離婚後3ヶ月以内に戸籍法の定める届出をすることによって、離婚時の姓を称することができるので、民法上、戸籍法上は別個の姓といえるからです。

しかし、登記上では同一の姓であるため、わざわざ氏名変更登記をする必要はありません。

地番を誤って登記したケース

次は、滅多にあるケースではありませんが、住所の地番等を誤って登記してしまったとします。

その後、正しい地番等に更正しないうちに、住居表示の実施がされた場合、住所の更正登記と住居表示の実施による変更登記を一括申請することが可能ですが、この場合の登録免許税は非課税で済むのかどうかです。

というのも、住居表示の実施は自分の都合ではなく、自治体の都合によるものなので、通常であれば不動産1個につき1000円かかる登録免許税が非課税とされています。

そこで、住所の更正登記と住居表示の実施による変更登記を一括申請する際も、非課税で済むのかどうかというところがポイントなのですが、これについては非課税でOKです。

これは、住居表示の実施による変更登記の前が更正登記ではなく、通常の住所変更であっても同じく非課税とされているからです。

所有権の抹消登記をするケース

次も、滅多にあるわけではありませんが、所有権の登記名義人がAからBに移っている場合に、所有権の抹消登記を申請する場合です。

所有権の抹消を申請することで、前所有者であったAが登記名義人に復活するわけですが、もし、Aの現住所が登記時上の住所と異なっていた場合に、所有権抹消登記の前提としてAの住所変更登記を要するのかどうかというところがポイントです。

そもそも、ここでいう登記名義人というのは現に効力を有する登記名義人のことを指します。

よって、従前、登記名義人であったAは、所有権抹消登記の際に登記権利者になりますが、現に効力を有する登記名義人には含まれません。

その結果、このケースではAの住所変更登記を要することなく、所有権の抹消登記を申請することができます。

ただし、その際にはAの住所が変わっていることを証明するための変更証明書を添付することになります。

相続財産管理人が選任されるケース

被相続人に一切相続人がいない場合、その者の遺産は相続財産法人となり、相続財産管理人が選任されます。

遺産の中に不動産があれば、被相続人名義から相続財産法人名義への変更登記を申請する必要があります。

その場合の登記の目的の書き方がどうなるかですが、「何番登記名義人氏名変更」となり、登記原因日付は「年月日相続人不存在」となります(日付は死亡日)。

変更後の事項は「亡A相続財産」で、申請人は相続財産管理人となります。

過払い金が発生していたケース

債務整理の場面でも、不動産を担保に多額の借入れをしている場合があります。

その場合、最終的に借金を返済したり、約定利率での完済には至らなくても、利息制限法で引き直し計算をしてみたところ、すでに過払いであることが判明し、和解や判決を経て過払い金を回収した場合、貸金業者から担保の抹消登記に必要な書類が送付されてきます。

もし、現住所が登記上の住所と変更しているのであれば、所有者は現に効力を有する登記名義人として、抹消登記の登記権利者となるので、担保の抹消登記の前提として住所変更登記が必要になります。

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