引き直し計算と利息の取り扱い

およそ5年以上の取引がある場合、利息制限法で引き直し計算をすると、ある時点で約定債務がなくなり、逆に利息の払い過ぎの状態となります。

 

この過払い状態になった以降も、新たに借入れと返済を繰り返しているような場合、過払い金の利息を新たな借入金に充当するかどうかが問題となります。

 

実務上は、充当して計算することがほとんどですが、中には充当できないと争ってくる業者(代表格はアイフル)もいます。

 

なぜ、充当できないと争ってくるかといえば、利息を充当せずに別個に計算をした方が、過払い金の総額が少し低くなるからです。

 

しかし、裁判所が下す判決では、利息も借入金に充当する計算を認めているものがほとんどです。

 

そこで、以下にいくつかの判決の抜粋を記載しておきますので参考にしてください。

 

 

参考判決

 

被告は、予備的主張として、払い過ぎた利息について、新たに発生した借入金債務に充当することはできない旨主張するが、

 

福岡高等裁判所那覇支部判平成21年2月10日(平成20年(ネ)第99号、金融・商事判例1351号42頁)は、被告(貸金業者)は、原告との間で、基本契約に基づき、継続的に借入れと弁済が繰り返される金銭消費貸借の取引(本件取引)を行っていたが、

 

原告が、本件取引に係る弁済金のうち、利息制限法1条1項の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると諒か利息が発生するとして、不当利得金等の支払いを求めたところ、

 

原審が、原告の請求を全部認容した事案で、控訴審たる福岡高等裁判所那覇支部は、本件取引関係では、過払金が発生した時点以降は、

 

制限利率の基準となる元本額は、極度額ではなく、新たな貸付けに係る金額とそれまでの貸付けに係る残元金との合計額であると判示し、

 

悪意利息の充当を認めていることと、そもそも過払金充当合意は、複雑な法律関係を望まないという当事者の合理的な意思にもその根拠が求められるものであり、

 

不当利得返還債権だけでなく、更に利息債権という別個の債権が成立することを望まないことは当然であり、この点からも、利息を充当せず、別個に計算すべきという被告の主張には理由がない。

 

 

上記判決からもわかるとおり、利息だけを別個にして取り扱うと、法律関係が複雑になってしまい、そのような事態は当事者間も望まないのが通常であるとの考えのものに充当を認めています。

 

よって、引き直し計算の際は、利息を別個に扱うのではなく、普通に計算すればOKです。

 

 

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