貸金業者の合併と過払い金請求
過払い金を請求する際に気をつけなればいけないことの一つに、貸金業者の「合併」があります。
合併すると、一切の権利義務が承継会社に引き継がれます。
そのため、合併により消滅する会社で発生した過払い金は、承継会社に請求できることになります。
この辺は、合併を「相続」と同じように考えるとわかりやすいと思います。
相続でも、亡くなった方(これを「被相続人」といいます)の一切の権利義務は、相続人に承継されます。
よって、被相続人が貸金業者に対して不当利得返還請求権(過払い金返還請求権)を持ったまま亡くなった場合、その相続人は貸金業者に対して請求することができるわけです。
同様に、合併により消滅する会社に対して、不当利得返還請求権を持っている場合には、合併により存続する会社に対して請求することができるということになります。
貸金業者は近年、合併を盛んにしており、その点で注意しなければいけないことがあります。
たとえば、以下のような場合です。
A社 ⇒ 50万円の過払い
B社 ⇒ 100万円の借金
A社への借金は数年前に完済していたとします。
そして、過払い金を回収できるという話を耳をして、A社に対して不当利得返還請求をしました。
しかし、A社は最近になって、B社という会社に吸収合併されていました。
そして、B社に対しては、逆に100万円の借金があり、今でも返済をしています。
こういった場合、過払い金の請求先も合併により、現在ではA社からB社に変わります。
そのため、いくらA社時代の取引で50万円の過払い金が発生していても、B社にはそれを超える100万円の借金がありますので、差し引きしても50万円の借金が残ることになります。
この場合、別途、B社から50万円を返してもらって、100万円の借金はそのまま残るという取扱いにはなりません。
あくまでも、借金から過払い金を相殺しますので、現実的には借金の金額が100万円から50万円に減るだけで、お金が戻ってくるわけではないのです。
このように、最近の貸金業者の合併情報を知らないままに、安易に請求をしても、請求先の会社に対して借金を負っていたということもあるわけです。
このようなケースでは、過払い金を請求したつもりでも、結果としては借金が残るということにもなりかねず、その結果、信用情報期間に「債務整理」をしたような情報が載ってしまう可能性もあります。
これをいわゆる「ブラックリストに載る」などといいますが、そうなると他社のクレジットカードや、今後の融資にも影響が出てきますので注意が必要です。
そのため、当事務所でも完済した貸金業者への過払い請求の依頼を受けて、その業者に受任通知を送るときは、その業者と合併した会社から借り入れがないのかを必ず聞くことにしています。
その辺を確認せずに、受任通知を送ってしまうと、
「過払い請求のつもりが債務整理になってしまった」
ということにもなりかねません。
よって、専門家に依頼をせずに、ご本人で回収しようと思われている方で、現在も返済中の貸金業者がいたり、使用中のクレジットカードがある場合は、請求先の会社が現在使用中の会社に合併されていないかどうかを確認しておくことをおススメします。
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