過払い金の消滅時効と催告による中断
払い過ぎた利息の消滅時効は10年です。
この10年がいつから進行するのかがポイントとなりますが
「取引が終了した時」
からとされています。
では、司法書士などの専門家が貸金業者に
「受任通知」
を送ったのが10年を経過するより少し前で、その後、貸金業者から
「取引履歴」
が開示されるまでの間に10年が経過してしまった場合はどうなるのか。
なお、民法153条では
「時効の中断事由」
の一つとして
「催告」
というものを挙げています。
上記のようなケースで、受任通知の発送が催告に該当すれば、時効は中断するという結論になります。
そこで、実際に同様のケースで、受任通知が催告に該当するかどうか争われた裁判の判決を紹介します。
(前提事実)
原告代理人は、平成○年〇月○日、「受任通知書」と題する書面を発出した。
その受任通知書には、「後記依頼者から依頼を受け、貴社に対する不当利得返還請求に関し、簡易裁判所における代理業務及び裁判外の和解業務を遂行することになりました。
つきましては、依頼者と貴社との当初から完済までの取引経過の全て、及び当初の契約関係書類を、本書面到達後2週間以内に開示してください」との記載があり、依頼者として原告本人の氏名が記載されている。
参考判決
本件基本契約に基づく取引の終了時点が何時であるかについては上記原告の主張及び被告の主張に記載のとおり当事者間に争いがあるとことではあるが、
たとえ、被告主張のごとく、少なくとも本件金銭消費貸借取引は、平成○年〇月○日に原告の債務完済により終了したと解したとしても、
上記認定した事実によれば、原告代理人は、上記受任通知書において、取引履歴開示請求に当たり、・・・完済までの取引経過・・・を、・・・開示してください、と記載して
本件取引がすでに完済されたものであること及び貴社に対する不当利得返還請求に関し、と記載して
原告は本件取引について不当利得返還請求を行使するためにその準備として取引履歴の開示を求めていることを明示しており、
原告が被告に対して、債務の履行を請求する意思を示していることが認められる。
通常、一般消費者は、自ら具体的な金額を把握することは極めて困難であり、貸金業者から取引履歴の開示を受けて、初めて具体的な金額を把握することになるのが実情であること、
一方、貸金業者は、約定利率により一定期間取引を継続し完済した場合には、約定利率が利息制限法の制限利率を超えている限り、制限利率に引き直し計算すると超過利息が生じているであろうことは容易に推定できることであり、
このような開示請求があったということは不当利得返還請求がなされると当然予測できることであることからすると、
このような当事者間の取引における上記受任通知書は、その超過利息を請求するという原告の意思を被告に対して告知しているものと解するのが相当である。
そして、催告とは債権者が債務者に対して債務の履行を請求する意思を通知することであり、その方式は特に問われず、
裁判外の請求としての催告に時効中断の効力を認めた法の趣旨が、時効期間が経過する直前において
正式の中断手続きを直ちにとることができない場合に債権者保護のため、時効が完成するのを防ぐ便法として、
時効の完成を最大6箇月に限り阻止することを容認したものであることに鑑みると、上記に受任通知は、民法153条の催告に該当すると解するのが相当である。
そして、原告はこの催告から6箇月以内である平成○年〇月○日に本件訴えを提起したのであるから、時効中断の効力が生じているものと認められる。
したがって、本件不当利得返還請求に対する被告の消滅時効の抗弁は認められない。
この判決からも、受任通知書に不当利得返還請求をする旨が明示されている場合、その受任通知には時効中断事由である催告に該当すると考えてよいと思います。
ただ、事前に10年の時効期間が経過しそうな場合は
「内容証明郵便」
で不当利得返還請求をする旨を通知したうえで、時効期間経過後に裁判所に提訴するのが安全といえます。
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