貸付中止措置と過払い金の消滅時効
消滅時効の起算点は
「取引が終了した時」
です。
では、貸金業者が
「貸付中止措置」
を取ったような場合、この時点から消滅時効が進行するのでしょうか。
なお、貸付中止措置とは、たとえば借主の信用情報が悪化したり、貸金業者側が借主の返済状況などを考慮して、一方的に貸付けをできなくする措置のことです。
貸付中止措置が取られると、以降は借主は新たな借り入れができなくなり、返済のみを続けることになります。
なぜ、この貸付中止措置と消滅時効が関係するのかといえば、平成21年の最高裁判決が
「過払金充当合意が不当利得返還請求権の法律上の障害となる」
と判示しているからです。
つまり、新たな借り入れができないということになれば、借主がいつ不当利得返還請求をしてきてもおかしくはないため、法律上の障害が事実上なくなったと考えられ、その結果、そのときから消滅時効が進行するという考えです。
こういった主張をしてくる貸金業者は現在のところ多くはありませんが、理論的には一理あると思われますので、新たな争点の一つといえます。
ただし、最近出て来た争点なので、まだ裁判例も多くはありません。
数少ない裁判例を見てみると、貸付中止措置によって消滅時効が進行するとの判断はされていないようです。
その主な理由としては、仮に、 貸金業者が貸付中止措置を取っていても、
「それが業者内部の手続きにとどまり、客観的に第三者でも認識できるような状態になっていない限り」
平成21年判決の言う「法律上の障害」がなくなったとはいえず、その結果、消滅時効も進行しないと言えるのではないかと思います。
ただし、この判決理由を見ると、仮に、貸付中止措置が貸金業者内部の手続きにとどまらず、第三者でも客観的にわかるような状態にされていれば、法律上の障害がなくなり、その結果、消滅時効が進行すると考えられなくもありません。
よって、単に貸付中止措置がされていたとしても、一律に判断することはできず、ケースバイケースで判断されることになると思われます。
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