新不登法における事前通知制度
登記識別情報が提供できない場合の本人確認手続きについて説明します。
不登法の改正により、事前通知制度も変わりました。
まず、事前通知制度がどういったものかを説明します。
不登法では、登記識別情報を提供すべき登記申請において、登記識別情報を提供できない場合、登記義務者に対して、
当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思慮するときは、一定期間内にその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない、と定めています。
登記官は、登記義務者から申出がなされて、初めて本人であることを確認できたとして、登記手続きを完了することができます。
なお、この事前通知を要する登記申請がされている間は、その物件はいわゆるキーロックされた状態になります。
よって、事前通知の申出期間中に、同一不動産に対して矛盾抵触しない他の登記申請があっても、
先順位の登記申請の受否が決定するまでは後順位の登記申請は保留されます。
また、キーロック中ですので、登記事項証明書の交付を受けることもできなくなります。
事前通知の方法ですが、登記義務者の登記上の住所に送付されます。
登記義務者が法人である場合は、原則としてその法人の本店所在地に送付しますが、事前に代表者個人の住所への送付を希望する申出があったときは、代表者の住所に宛てて通知されます。
もし、申請人が申し出た代表者の住所が、会社登記された代表者の住所と違う場合は、商業登記簿に記載された代表者の住所宛てに送付されます。
なお、法人の本店所在地に送付しても受取人不明で戻ってきた場合でも、法人の代表者宛てへの再発送の申出はできません。
また、オンライン申請の場合でも、事前通知は書面でおこなわれます。
登記義務者が個人もしくは法人であって代表者個人の住所へ通知する場合は、本人限定受取郵便でおこなわれます。
これに対して、法人の本社宛ての場合は、引受及び配達記録郵便でおこなわれます。
次に、成りすまし防止のための前住所への通知についてです。
事前通知を要する登記申請で所有権に関するものである場合、登記義務書の住所について変更登記がされているときは、
原則として、上記の通知に加えて、登記上の前の住所にも通知をしなければいけません。
これは、登記の申請に先立って、登記記録上の住所を移転したうえで、真の所有者に知られることなく、新たな住所で通知を受けることを防止するためです。
この前住所への通知は、転送を要しない郵便でおこなう必要があります。
これにより、前住所に登記名義人が住んでいなければ、通知が登記所に返送されるはずなので、成りすましの可能性があるかどうかの判断がつけられます。
もし、成りすましによって住所変更の登記がされていれば、真の所有者が法務局からの通知を受け取り、その者が異議を申し立てることによって、登記官が本人であるかどうかの確認ができるわけです。
なお、事前通知と共に前住所への通知がなされ、前住所への通知への通知が返送される間に、事前通知に対する申出があった場合は、返送を待つことなく登記は実行されます。
ただし、住所変更の登記から3ヶ月以上経過している場合は、成りすましの可能性が低いので、前住所への通知は省略されます。
なお、3ヶ月以内に住所変更の登記が複数されている場合、いずれの住所にも通知を送る必要があります。
また、登記義務者が法人である場合には、前住所への通知の適用はありません。
通知に対する申出についてですが、登記の申請がオンラインでなされた場合は、申出もオンラインでおこなうことになります。
これに対して、登記の申請が書面でなされたのであれば、申出も書面でおこなうことになります。
これは、オンライン申請がなされたときは、電子署名をおこなった情報を送信しているので、
その申出の電子署名と申請情報の電子署名の同一性を確認することにより、申出をした者と申請人との同一説を確認できるからです。
申出期間は、通知を発送した日から2週間以内(外国に居住している場合は4週間)で、発送日の翌日から起算します。
もし、事前通知書が受取人不明で返送されても、期間満了前であれば再発送の申出が可能です。
しかし、その場合でも満了日が延長されるわけではなく、最初に事前通知を発送した日から2週間の満了によって申出期間は終了します。
期間内に申出があった場合、保留されていた登記が実行されることになりますが、申請の受け付けは申出の時ではなく、あくまでも登記の申請時となります。
これは、登記識別情報の提供がない登記であっても、申請時に順位が確保されるという原則を守るためです。
最後に、旧法と新法における事前通知の相違点を挙げておきます。
(旧法)
1. 所有権に関する登記に限られる。
2. 通知は普通郵便でおこなわれる。
3. 申請書記載された登記義務者の住所にのみ通知された。
4. 受付順位は、申出があったときとき。
(新法)
1. 所有権以外に関する登記にも適用される。
2. 通知は本人限定郵便や書留郵便でおこなわれる。
3. 所有権に関する登記については、前住所への通知もおこなわれる。
4. 受付順位は当初の申請があったとき。
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