監査役と会計監査人、会計参与

旧商法における株式会社では、最低でも取締役が3人以上で、監査役も1名以上選任しなければいけませんでした。

 

しかし、会社法では監査役の設置は任意となりました。

 

ただし、取締役を3人以上選任し、取締役会を設置した場合は、非公開会社で会計参与を設置した場合を除き、監査役の選任は必須です。

 

なお、監査役の職務内容は

 

「取締役の職務の執行を監査し、監査報告を作成すること」

 

です。

 

そして、監査役は独任制の機関のため、たとえ複数人の監査役がいても、各自が独立して監査権限を有します。

 

任期は原則4年で、定款で短縮することはできません。

 

しかし、非公開会社では、最長10年まで任期を延長することができます。

 

なお、監査役の他に会計参与、会計監査人という役職がありますが、その職務内容の違いについて説明します。

 

まず、監査役の職務内容は上記のとおりですが、計算書類を作成するわけではなく、会社の内部機関として計算書類を監査するのが仕事です。

 

これに対して、会計参与は会社の内部機関として取締役や執行役と共同して計算書類の作成をすることを職務としています。

 

また、会計監査人は、会社の内部機関としてではなく、会社の外部から計算書類の監査をすることを職務としています。

 

つまり、監査役と会計参与は会社の内部機関としてですが、会計監査人は外部機関である点が異なり、監査役と会計監査人は計算書類の作成が職務ですが、

 

会計参与は計算書類の作成をおこなう点がそれぞれ異なります。

 

監査役の権限は、大きく分けて2つです。

 

まず一つは、会計監査権限(計算書類等の監査権限)で、もう一つが業務監査権限(取締役の職務執行の監査権限)です。

 

ただし、非公開会社では、定款に定めることにより、監査役の権限を会計監査権限に限定することができます。

 

では、実際に株式会社を設立する際に監査役を設置した方がよいのかどうかが問題となります。

 

旧有限会社法下の有限会社においては、取締役は1名でもよく、監査役の設置は任意で、その権限も会計監査権限のみでした。

 

よって、非公開会社の中小企業において、旧有限会社と同規模程度のものであれば、監査役をあえて設置する必要はないのではないかと思われます。

 

もし、設置するという場合であっても、定款で「監査役は、会計に関するものに限り監査を行う」等と定めて、会計監査権限に限定することが多いようです。

 

では、次に会計参与を設置した方がよいかどうかを検討してみます。

 

会計参与の職務内容は、上記のとおり取締役と共同して計算書類等を作成することです。

 

そして、会計参与になる資格がある者は、公認会計士や税理士(ならびにその法人)に限られます。

 

会計参与を設置するメリットとしては

 

1. 計算書類の正確性が担保される

 

2. 金融機関や取引先に対する信頼性が上がり、特に金融機関から融資を受ける際に有利になることがある

 

3. 取締役が経営業務に専念できる

 

等が挙げられます。

 

反面、デメリットしては

 

1. 会社資産の含み損が会計上の損失として顕在化することにより、会社の経営内容を悪化させる恐れがある

 

2. 会計参与に対する報酬の支払義務が発生する

 

等が挙げられます。

 

以上のメリット・デメリットを考慮して、会計参与を設置するかどうかを総合的に判断する必要がありますが、会計参与を設置している中小企業は圧倒的に少ないのが現実です。

 

 

 

 

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