数次相続による相続登記
数次相続とは
所有権の登記名義人の死亡により相続が開始したが、その相続による名義変更手続きをしないうちに相続人が死亡してしまい、第2、第3の相続が開始した場合を数次相続といいます。
令和4年に死亡した夫Aの相続人
- 妻B
- 長男C
次男D
令和5年に死亡した次男Dの相続人
- 妻E
- 子F
- 子G(未成年)
上記の事例では、夫Aの法定相続人が妻B、長男C、次男Dの3人の場合、遺産分割を行わないうちに次男Dが死亡しています。
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この場合、次男Dが有していた相続権は次男Dの妻E、子F、子Gの3人に承継されます。
夫Aの遺産分割協議に参加する相続人と法定相続分は以下のとおりです。
夫Aの遺産分割に参加する相続人と法定相続分
- 妻B ➡ 16分の8
- 長男C ➡ 16分の4
- 次男Dの妻E ➡ 16分の2
- 次男Dの子F ➡ 16分の1
- 次男Dの子G ➡ 16分の1
子Gは未成年なので裁判所に特別代理人の選任申し立てをしないと遺産分割協議ができません。
なぜなら、Gの母であるEがGの法定代理人として遺産分割協議に参加すると、E自身も遺産分割協議に参加する相続人であるため、EとGの利益が相反するからです。
子F、子Gの2人とも未成年の場合は、それぞれに別の特別代理人を付ける必要があります。
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代襲相続との違い
数次相続と紛らわしいものに代襲相続があります。
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代襲相続は、上記の例でいえば、次男Dが夫Aよりも先に死亡していた場合です。
この場合、夫Aの相続人は妻B、長男C、子F、子Gの4人となります。
つまり、妻Eは夫Aの代襲相続人とはなりません。
代襲相続との大きな違いは、次男Dの妻Eに夫Aに関する相続権がある点です。
数次相続では、夫Aの遺産分割をする前に相続人である次男Dが死亡したため、相続人の地位を次男Dの相続人である妻E、子F、子Gが承継します。
これは、妻Eが次男Dの相続人として夫Aの相続権を承継しているからです。
ここがポイント!
数次相続では、妻Eが次男Dの相続人として、夫Aの相続権を次男Dから承継する
最終の相続人へ直接登記ができる場合
上記の例で、夫Aから最終の相続人である妻E、子F、子G名義にできるかどうかですが、登記手続き上は第1および中間の相続が単独相続である場合に限り、登記原因およびその日付を連記した上で、登記名義人から最終の相続人名義に直接相続登記をすることができるとされています。
第1および中間の相続が単独相続になった原因は問わないので、遺産分割や相続放棄のいずれでも構いません。
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例えば、夫Aの相続について、遺産分割協議によって第1次相続の相続人を亡くなった次男Dの単独にすれば、夫Aから直接、妻E、子F、子G名義に変更することができます。
最終の登記名義人は単独名義であっても共同名義であっても構いません。
つまり、夫Aから子Fの単独名義にすることもできますし、夫Aから妻E、子F、子Gの3名の共有名義にすることも可能です。
最終の相続人へ直接登記する場合の原因日付
令和4年〇月〇日D相続(夫Aの死亡日)令和5年〇月〇日相続(次男Dの死亡日)
ここがポイント!
第1および中間の相続が単独相続であれば、最終の相続人へ直接登記ができる
最終の相続人へ直接登記できない場合
第1次相続および中間の相続が単独相続でない場合には、直接、最終の相続人へ登記することができません。
上記の例でいえば、第1相続で次男Dの他に妻Bもしくは長男Cが共同相続した場合です。
例えば、第1次相続で妻Bと次男Dが2分の1ずつ相続するとの内容で遺産分割協議が完了していたとします。
その後、その旨の相続登記をしないうちに、次男Dが死亡し、第2次相続では妻Eのみが相続する内容の遺産分割協議が成立したとします。
この場合、最終的には妻B2分の1、妻E2分の1の共有名義となりますが、2枚の遺産分割協議書を提出しても、一度に妻Bと妻Eの共有名義に相続登記をすることはできません。
なぜなら、第1次相続が妻Bと次男Dの共同相続で単独相続ではないからです。
よって、この場合は、まず、妻Bと亡次男D名義に相続登記をした後に、次男Dの持分2分の1について妻E名義に相続登記をする必要があります。
この場合の登記の目的と登記原因は以下のとおりです。
第1次相続
登記の目的 所有権移転
登記原因 令和4年〇月〇日相続
相続人 持分2分の1 妻B 2分の1 次男D
第2次相続
登記の目的 D持分全部移転
登記原因 令和5年〇月〇日相続
相続人 持分2分の1 妻E
ここがポイント!
第1および中間の相続が共同相続だと、最終の相続人へ直接登記できない
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