贈与と死因贈与の取り消し|口頭贈与と書面贈与の違いなど

贈与の取り消しと贈与登記、住所変更登記の義務化の解説

生きている間に自分の財産を贈与することを生前贈与といいます。

あげる相手方は相続人に限らず、愛人だろうと認知してない子でもOKです。

口頭による贈与は各当事者が一方的に解除することができます。

これは民法の規定によります。

書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。

ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

民法第550条

民法550条但し書きによれば、実際に財産をあげた場合は、その部分に関しては一方的に解除できないということになります。

よって、贈与後に財産が減って生活が苦しくなっても、あとから贈与を取り消すことはできないので慎重におこなう必要があります。

口約束による贈与の取り消し

  • 履行していない部分 ➡ 一方的な取り消し可
  • 履行した部分 ➡ 一方的な取り消し不可

民法550条の反対解釈として、書面による贈与は一方的に取り消しはできないということになります。

ただし、これは一方的な取り消しができないというだけで、契約自由の原則から当事者双方が合意していれば、書面による贈与でも取り消しは可能です。

もちろん、履行した部分についても双方の合意があれば取り消しできます。

死因贈与契約は、通常の贈与と異なります。

死因贈与とは「自分が死んだらあげるよ」という契約です。

死因贈与は、たとえ書面にしていても一方的に取り消しできます。

なぜなら、民法554条で遺贈に関する規定を準用しているからです。

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

民法第544条

よって、死因贈与は遺言と同様に嫌になったら一方的に取り消すことができます。

ただし、負担付き死因贈与は一方的に取り消すことができない場合があります(最高裁昭和57.4.30判決)。

例えば、高齢の母親がいる場合に長男に母親と同居をして生活の面倒を見ることを条件に、自分の家を贈与する契約をした場合などです。

この場合に、長男がきちんと母親と同居をして生活面のサポート(生活費の援助や介護など)をした場合は、自宅を長女に相続させる遺言を書いていたとしても、死因贈与契約が優先される可能性があります。

なお、死因贈与と遺贈の大きな違いは、死因贈与が当事者双方の契約によって成立するのに対して、遺贈は遺言者の一方的な意思表示というところです。

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贈与の額が大きいと相続人の遺留分を侵害する可能性があるので注意が必要です。

また、けっこうな贈与税もかかるので事前に計算してみる必要があります。

よって、生前贈与は贈与後の自分の生活に影響しない程度にし、かつ、相続人の遺留分も侵害しない範囲でするのがよいと思います。

以下に遺留分についての話をもう少し書いておきます。

相続人が複数いる場合でも、その中の1人に全財産をあげたいという場合があります。

そういった場合、遺言を書いておけばいいと思っている方も少なからずいるのではないでしょうか。

しかし、遺言は万能ではありません。

なぜなら、相続人にも遺留分があるからです。

遺留分というのは、各相続人が最低限主張できる相続分のようなものです。

よって、被相続人(亡くなった人)が遺言で全財産を妻に相続させる」と書いてあっても、妻との間に子供がいれば、その子供は遺留分を主張することができます。

ですから、遺言 を書くときは遺留分に配慮して書く必要があります。

ただ、相続人の中でも兄弟姉妹には遺留分はありません。

よって、相続人が妻と亡くなった夫の兄弟姉妹のような場合は「妻に全財産を相続させる」という遺言を書いておけばOKです。

不動産を贈与した場合は贈与登記をしなければ、贈与したことを第三者に対抗することができません。

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贈与登記は、贈与した人と贈与された人との共同申請でおこないますz。

必要なものは以下のとおりです。

贈与した人が用意するもの

  • 当該不動産の権利証(登記識別情報)
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 実印
  • 当該不動産の固定資産税評価証明書

贈与された人が用意するもの

  • 住民票
  • 認印

贈与する人の現在の住所が、登記上の住所と異なっている場合は、贈与登記の前に住所変更登記が必要です。

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贈与登記をする際は法務局に申請する際に登録免許税という税金を支払う必要があります。

登録免許税を納めないと申請は却下されます。

納める税額は不動産の評価額の1000分の20です。

例えば、評価額が1000万円の不動産を贈与するのであれば、登録免許税は20万円となります。

もし、半分を贈与しただけであれば、1000万円の評価額の2分の1となり、登録免許税は10万円となります。

住所変更登記は、2026年(令和8年)4月から義務化されます。

義務化がスタートすると、住所変更があってから2年以内に住所変更登記をおこなう必要があります。

正当な理由なく住所変更登記をおこなわなかった場合は、5万円以下の過料の対象になります。

住所変更登記の義務化は、過去の住所変更登記にも適用されます。

つまり、義務化前の住所変更も対象になります。

その場合、義務化がスタートしてから2年以内に住所変更登記をおこなう必要があります。

つまり、2028年(令和10年)4月までに住所変更登記をおこなう必要があります。

住所変更登記の義務化のポイント

  • 住所変更登記の義務化は2026年(令和8年)4月1日からスタートする
  • 過去の住所変更にも適用される
  • 正当な理由なく住所変更登記をおこなわないと5万円以下の過料の対象になる

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