遺言書保管制度のメリット・デメリット|公正証書遺言との比較
遺言書保管制度と公正証書遺言の違いの解説
遺言のススメ
当然ですが、自分の財産は生きている限りは自分の物です。
しかし、自分が死んでしまった後は財産は遺産となり、法律上の相続人が承継します。
生前に遺産をどのように配分するか決めておかないと、法定相続分によって相続されるか、もしくは相続人全員の遺産分割協議によって配分が決まります。
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自分が死んだ後に遺産をどのように相続人に配分するかを自分で生前に決める方法があります。
それが遺言です。
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自分の財産の処分なので、遺言者は自由に遺産の配分を遺言で指定できます。
そのため、相続手続きにおいては、遺言者の意思が最優先されます。
遺言にはいくも種類がありますが、実務上よく使われるものは以下の2つです。
遺言の種類
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
自筆証書遺言は自分で書くものなので、その存在や内容を他人に知られることがありません。
反面、自筆証書遺言が成立する要件を満たしていないと、法律的に無効になるリスクがあります。
これに対し、公正証書遺言は法律の専門家である公証人に作成してもらうので、あとで無効になる心配はありません。
しかし、公正証書遺言を作成するには少なくとも証人2人以上の立会いが必要なので、その存在と内容を完全に秘密にすることはできません。
また、公証人の手数料が数万円かかるので、費用の点からいえばマイナスです。
とはいえ、後々のトラブルを未然に防止するためにも、どうせ遺言を書くのであれば自筆証書遺言よりも公正証書遺言です。
しかし、自筆証書遺言も以下で解説する遺言書保管制度によって、以前よりも格段に使い勝手がよくなったので、一概に公正証書遺言の方がよいとは言えなくなってきました。
遺言書保管制度とは
自筆証書遺言は、決められたルールを守って書かれたものでないと無効になるおそれがあります。
また、せっかく遺言書を書いたのに相続人に発見してもらえないといったリスクがありました。
そういったリスクを解消するために、2020年(令和2年)7月10日から遺言書保管制度がスタートしました。
遺言書保管制度は、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度です。
遺言書の原本は50年、画像データは150年にわたって保存されます。
法務局に申請する際に、自筆証書遺言の形式的なルールが守られているかチェックをしてもらうことができます。
よって、あとからルール違反で無効になる心配がなくなり、裁判所での検認手続きも不要です。
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それだけでなく、遺言者が死亡した際は事前に指定した相続人に遺言書の存在が通知されます。
これにより、確実に相続人に遺言書の存在が知られることになりました。
遺言書保管制度によって、これまでの自筆証書遺言の弱点がほぼすべて克服されたといっても過言ではありません。
よって、今後はますます遺言書保管制度の利用が進むのではないかと思われます。
遺言書保管制度のメリット
- 申請の際に法務局で形式的なルールに違反していないかチェックしてもらえる
- 偽造や紛失のおそれがない
- 裁判所での検認手続きが不要
- 遺言書の存在が相続人に通知される
- 費用が安い(3900円)
遺言書保管制度のデメリット
遺言書保管制度にはメリットが沢山ありますが、デメリットもあります。
その一つ目が、遺言書保管制度では遺言書の内容は一切チェックしてもらえないという点です。
法務局に申請する際は、遺言書の外形的な確認はしてもらえます。
つまり、財産目録を除いた全文が自書されているか、日付や署名・押印などがされているかのチェックはしてもらえますが、遺言の内容についてはノータッチです。
遺言書の内容については、法務局も一切答えてくれません。
よって、遺言の内容によっては、遺言者の意思が十分に反映されないおそれがあるので、その辺が不安であれば公正証書遺言を選択した方がよいケースもあります。
もう一つが、遺言者本人が必ず法務局に出向く必要があるという点です。
これは第三者によるなりすましなどを防ぐために、本人に直接会って本人確認と意思確認をおこなうためです。
よって、いくら体調が悪かったり、仕事が忙しいからといって第三者を代理人にすることは認められていません。
公正証書遺言の特徴
遺言書保管制度では、偽造や紛失等のリスクはありませんが、遺言の内容によっては遺言者の意思を十分に反映できない可能性があります。
よって、財産が高額でその種類も多岐にわたるような場合は、遺言書保管制度ではなく弁護士や司法書士に相談をして、遺留分などに配慮したうえで最適な公正証書遺言を作成した方がよいケースがあります。
公正証書遺言の特徴
- 公証人役場で作成され、原本が保管されるので偽造や紛失のおそれがない
- 事前に弁護士や司法書士に遺言内容を相談したうえで決めることができる
- 証人2人以上を用意する
- 遺産の額に応じて数万円の費用がかかる
- 裁判所での検認が不要
偽造や紛失のおそれがなかったり、裁判所での検認手続きが不要な点は自筆証書遺言と同じです。
弁護士や司法書士に事前に遺言の内容をどうするか相談したうえで作成する点については、遺言書保管制度でも可能ではあります。
ただし、遺言書保管制度のメリットの一つに費用が3900円と非常に安い点がありますが、おそらく遺言書保管制度を利用する方はなるべく費用をかけずに遺言書を作成したいはずです。
専門家に相談した場合は、証人2人も用意してくれることが多いです。
よって、専門家に頼らずになるべくお金をかけないで遺言書を作成したい方は、新たに創設された遺言書保管制度を利用し、一部の富裕層はこれまでどおり専門家に依頼をしたうえで公正証書遺言を利用するのではないかと思われます。
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