過払い金訴訟と合意管轄

民事訴訟法では、あらかじめ裁判所の管轄が定められています。

 

「管轄」とは、どこの裁判所に提訴できるかということです。

 

民事訴訟法では、裁判の性質ごとに裁判所の管轄が決められていますが、これは主に当事者間の公平と利便性などを元に考えられているものです。

 

しかし、あらかじめ当事務者双方が合意しているのであれば、民事訴訟法で定めているところ以外の裁判所にかんかつをみとめても良いとされています。

 

これを

 

「合意管轄」

 

といいます。

 

合意管轄の代表的なものは、たとえばクレジット会社やサラ金業者との契約書の裏面に、小さな文字で

 

「本件に関する訴訟については、当社の本店所在地(又は支店)を管轄する簡易裁判所をもって合意による裁判所とする」

 

などと書かれているものです。

 

なお、上記の文言の中に「本店所在地(又は支店)」と書いてありますが、ここでいう支店とはその会社のどこの支店でもOKという意味ではなく、実際に契約を締結した支店であれば管轄があるとされています。

 

また、単に裁判所と書かずに「簡易」裁判所と規定していることがほとんどです。

 

簡易裁判所と地方裁判所の違いは、まず第一に金額です。

 

簡易裁判所では、その上限金額が140万円までと規定され、それを超える金額であれば原則的に地方裁判所が管轄を有することになります。

 

もう一つの大きな違いは、代理人制度です。

 

簡易裁判所では、その会社の従業員を代理人にすることができ、これを許可代理人といいます。

 

反面、地方裁判所では一般の従業員を代理人にすることはできず、原則的に弁護士でなければ代理人になることはできません。

 

よって、地方裁判所を合意管轄としてしまうと、わざわざ弁護士を代理人に選任しなければならず、訴訟費用が余計に掛かってしまうことになります。

 

なお、例外的に地方裁判所であっても、登記した支配人であれば代理人になることは可能です。

 

いずれにせよ、簡易裁判所であれば従業員を代理人にすれば足りるため、費用を安く抑えるために請求額が140万円を超える金額であっても合意管轄を理由に簡易裁判所に提訴することもあるわけです。

 

また、過払い金の返還請求訴訟については、こういった契約書に記載された合意管轄には縛られないという考えが主流です。

 

なぜなら、貸金業者が用意した契約書に記載された合意管轄というのは、あくまでも貸金業者が借主に対して裁判を起こす貸金請求事件に関するものに限られるからです。

 

利息制限法で引き直しをすることで、超過利息の存在が明らかになった場合、借主は貸金業者に対して裁判を起こして回収することができますが、この裁判の種類は

 

「不当利得返還請求訴訟」

 

に分類されます。

 

合意管轄で決めたのはあくまでも貸金請求訴訟ですから、不当利得返還請求訴訟にはその効力は及ばないという考えになるわけです。

 

よって、払い過ぎた利息を請求する場合、合意管轄の有無に関わらず、借主の住所地を管轄する裁判所に提訴することができるということになります。

 

 

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