借金の消滅時効と保証債務の関係
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保証債務とは
保証債務というのは、保証人が債権者との保証契約に基づいて負っている債務のことです。
実務上では連帯保証ではない通常保証が利用されることまずないため、ここでいう保証人はすべて連帯保証人という意味です。
保証債務は借主である債務者が負担している主債務とは別個の債務です。
よって、保証債務の場合は主債務者と連帯保証人がそれぞれ時効援用することができます。
消滅時効とは
消滅時効においては、保証債務が主債務とは別に時効にかかるケースがあるので注意が必要です。
実務上でも債務者は時効援用できるのに連帯保証人はできないといったケースがあります。
どういった場面で時効援用できたり、できなかったりするかについて以下で詳しく解説していきます。
ここがポイント!
保証債務は主債務とは別個の債務なので、消滅時効の成立が分かれることもある
主債務と保証債務の時効の更新(中断)
主債務者に時効の更新(中断)事由があった場合に、保証債務の時効も更新(中断)するのか、逆に保証債務に時効の更新(中断)事由があった場合に、主債務の時効が更新(中断)するのかについては、非常に紛らわしいので、以下の表で確認してください。
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【消滅時効の更新一覧表】
主債務 | 保証債務 | |
---|---|---|
主債務者に対する請求 | 更新(中断)する | 更新(中断)する |
保証人に対する請求 | 更新(中断)する | 更新(中断)する |
主債務者による債務承認 | 更新(中断)する | 更新(中断)する |
保証人による債務承認 | 更新(中断)しない | 更新(中断)する |
主債務者もしくは保証人に請求があった場合
ここでいう請求というのは単なる請求ではなく裁判上の請求をいうので、単に請求書が送られてきているだけでは時効は更新(中断)しません。
裁判上の請求とは
主債務者に請求があった場合、主債務者のみならず保証人の時効も更新(中断)します。
よって、債権者は主債務者に請求すれば、保証人の消滅時効も更新(中断)させることができるわけです。
また、保証人に対する請求であっても、主債務者の消滅時効が更新(中断)します。
本来であれば、主債務は保証債務に従属する関係ではないのですが、連帯保証においては例外的に保証人に対して請求があれば、主債務者に対する時効も更新(中断)すると規定されています。
ここがポイント!
債権者が主債務者もしくは保証人へ請求した場合は、いずれの時効も更新(中断)する
主債務者もしくは保証人が債務を承認した場合
債務の承認というのは、借金の一部を返済したり、支払義務を認めた上で返済方法などの話をすることです。
債務承認に該当する行為
- 借金の一部を支払う
- 分割払いや減額のお願いをする
- 和解書などにサインする
主債務者が債務の承認をした場合は、主債務の時効が更新(中断)するだけでなく、保証債務の時効も更新(中断)します。
これは、保証債務は主債務に従属する債務だからです。
これに対して、連帯保証人が債務の承認をした場合は保証債務の時効は更新(中断)しますが、主債務の消滅時効は更新(中断)しないとされています。
なぜなら、主債務は保証債務に従属しないからです。
債権者が保証人に請求した場合は主債務者の時効も更新(中断)するので、それと混同しないようにしてください。
債務承認をした連帯保証人が主債務の時効を援用することも可能です。
よって、主債務者が時効援用してくれない場合、債務承認をした連帯保証人が主債務の時効援用をすると、保証債務の付従性によって、主債務だけでなく保証債務も消滅させることができます。
ここがポイント!
保証人が債務の承認をしても主債務の消滅時効は更新(中断)しない
債権者が裁判をした場合
債権者が裁判を起こして判決などの債務名義を取得した場合、時効が10年に延長されます。
債務名義とは
- 確定判決
- 仮執行宣言付支払督促
- 和解(調停)調書
債権者が主債務者に対して判決を取得すると、保証債務は主債務に従属する関係にあるので、保証債務の時効も10年に延長されます。
これに対して、債権者が保証人だけを被告とした裁判を起こして判決を取得した場合、保証人に対する時効が10年に延長されるのは当然ですが、主債務者の時効も10年に延長されるのかどうかが問題となります。
保証人に対する請求によって、主債務者に対する消滅時効も更新(中断)することとの関係で考えれば、主債務の時効も10年に延長されそうですが、主債務の時効が10年に延長されることはありません。
つまり、保証人に対して判決を取得した場合、主債務者の時効も更新(中断)されますが、時効期間は延長されず5年のままということです。
そうなると保証債務の時効完成前に主債務の時効が完成する事態が起こり得ます。
この点については、保証債務の時効が完成していない段階であっても、保証人は主債務の消滅時効を援用することができるとされています。
その結果、保証債務の時効完成前でも、主債務の時効が成立すれば保証債務の付従性によって保証債務も消滅します。
ここがポイント!
判決によって保証債務の時効が10年に延長されても主債務の時効期間には影響しない
時効期間経過後の主債務者による債務承認
実務上は、債権者が時効期間経過後であるにもかかわらず、債務者の無知に乗じて催告書を送りつけてくることは珍しくありません。
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債権者が時効の援用をせずに1000円でも一部弁済してしまうと原則的に債務の承認となり、時効が更新(中断)します。
ここで問題になるのが、主債務者による債務承認が時効期間が経過する「前」なのか「後」なのかです。
時効期間経過「前」に主債務者が債務の承認をした場合は、保証債務の時効は更新(中断)します。
これに対して、主債務者が時効期間経過「後」に債務の承認をすると、保証人も時効援用権を失ってしまうのかどうかが問題となります。
これに対して、時効期間経過後の場合は、たとえ主債務者が債務承認をしても、保証人の時効は更新(中断)しません。
なぜなら、時効期間経過後に主債務者が一部返済した場合はすでに時効は完成しているので、主債務による債務承認があっても時効が更新することはありませんが、債権者(貸主)からすると債務者(借主)が返済をした以上は「もう時効を援用しないだろう」という信頼が生じるので、主債務者は信義則によって時効援用権を喪失するからです(最高裁昭和41年4月20日判決)。
この場合、主債務者が時効援用権を喪失する理由は「信義則」であり、債権者(貸主)の「もう時効を援用されることはないだろう」という期待を保護する趣旨です。
こういった場合にまで連帯保証人の時効援用権を喪失させるのは酷であるため、時効期間経過「後」であれば主債務者に債務承認があっても連帯保証人の時効は更新(中断)しないとされました。
つまり、時効期間経過後に主債務者が債務承認をしても、保証人は時効援用できるわけです。
【時効援用権の喪失】
債務承認のタイミング | 主債務 | 保証債務 |
---|---|---|
時効期間が経過する「前」に 主債務者が債務を承認 | 更新(中断)する | 更新(中断)する |
時効期間が経過した「後」に 主債務者が債務を承認 | 時効援用権を喪失する | 時効援用権を喪失しない |
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