株式会社への移行手続き
旧商法においては、物的会社(株式会社、有限会社)と人的会社(合名会社、合資会社)間における組織変更は認められていませんでした。
つまり、株式会社と有限会社間、合名会社と合資会社間においてのみ組織変更が認められていました。
しかし、会社法では有限会社が廃止され、その代り新しく認められた合同会社を含めた持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)と株式会社間の組織変更が認められることになりました。
また、持分会社の中でも、それぞれの社員の責任に関する定款を変更することで、異なる持分会社への種類の変更が認められています。
なお、従前の有限会社は会社法の施行後も、特例有限会社として存続しますが、もし、株式会社へ移行したい場合には定款を変更して商号中の有限会社を株式会社に変更し、その旨の登記をすることで通常の株式会社へ移行することができます。
具体的には、特例有限会社については解散の登記をして、商号変更後の株式会社については設立の登記を申請することになります。
この移行の登記の際に、商号自体を変更することも可能で、たとえば「有限会社千葉事務所」から「株式会社稲毛事務所」に変更することができます。
また、同時に変更できるのは商号だけではなく、役員の改選、資本金の増加等も同一の株主総会で変更することができます。
ところで、会社法では非公開会社の取締役の任期は最長で10年まで延長が可能になりましたが、特例有限会社の取締役の任期は会社法の適用を受けないので、従来どおり任期を無期限とすることが可能です。
しかし、特例有限会社が商号の変更により、通常の株式会社に移行した場合には会社法の取締役の任期に関する規定が適用されるので、株式会社への移行の登記に伴い、商号変更と取締役の任期が満了する場合があるので注意を要します。
つまり、特例有限会社ですでに選任後10年以上経過している取締役の場合、商号変更と同時に任期満了となります。
次に、代表取締役についてみていきます。
移行後の会社が取締役会設置会社でない場合で、取締役が各自会社を代表するのであれば、特に代表取締役の予選は不要です。
また、株主総会で定款を変更し、その定款の中で直接、代表取締役を記載することも可能です。
なお、特例有限会社が取締役の互選により、移行後の代表取締役を選任している場合、移行後の株式会社の取締役と特例有限会社の取締役が全員一致していれば、移行による登記と一緒に代表取締役の登記が可能です。
これに対し、新たな取締役を含む取締役の互選によって代表取締役を選任している場合、移行の登記と同時に代表取締役の登記をすることはできません。
なぜなら、新たな取締役は移行の登記が完了して初めて存在することになるので、移行の登記前に新たな取締役を含む取締役の互選によって代表取締役を選ぶことは許されないからです。
移行後の会社が取締役会設置会社である場合をみていきます。
この場合、特例有限会社から株式会社への移行に際して、定款に取締役会を設置する旨を定めることができます、
ただし、なんらの選任行為なくして特例有限会社の代表取締役をそのまま移行後の株式会社の代表取締役とすることはできません。
そのため、定款自体に最初の代表取締役の氏名を記載するか、定款に株主総会で代表取締役を選定する旨を定めた上で、その後の株主総会で代表取締役を選任する必要があります。
そして、定款変更日あるいは代表取締役の選任が効力を発生する日を移行の登記の申請日にすれば、取締役会設置会社である旨と代表取締役の登記を移行の登記と同時にすることができます。
これは、通常の株式会社の設立登記の際は、取締役会設置会社であっても定款に代表取締役の選任方法を規定しておけば代表取締役を選任することができるのでそれとの均衡を図ったものです。
つまり、株式会社への移行の際には、通常の株式会社が取締役会設置会社に移行する場合のように、取締役会設置の定めの登記と代表取締役の就任登記を同時に申請することはできないということになります。
登録免許税は、商号変更による株式会社設立登記が資本金額の1000分の1.5(ただし、最低額は3万円)で、特例有限会社の解散登記は9000円です。
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