抹消回復登記と抹消登記|違いや条件などの解説
抹消登記と抹消回復登記とは?利害関係人の承諾は必要?
抹消登記とは
不動産登記には「抹消登記」と「抹消回復登記」というものがあります。
抹消登記は、すでに完了している登記が原始的または後発的な事由によって、その実体関係を伴わなくなった場合におこなう登記です。
所有権のケースだと、AからBに売買を原因とする所有権移転登記がなされていたにもかかわらず、AB間の売買契約がそもそも存在していなかったような場合に当該所有権移転登記を抹消する場合などです。
抵当権のケースだと、すでに設定登記が完了している抵当権の被担保債権が債務者によって全額弁済された場合に、当該抵当権の抹消登記をする場合などです。
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この2つの最大の違いは、実体関係が存在しているかどうかです。
所有権の事例では売買契約という実体関係そのものが存在していません。
これに対して、抵当権の事例では実体関係に合った登記が存在した後に実体関係が消滅して登記が不適法になっています。
抹消登記と紛らわしいのは抹消回復登記だけではなく、変更登記というものもあります。
抹消登記と変更登記の決定的な違いは、抹消登記は登記事項の全部が不適法になった場合におこなうのに対して、変更登記は登記事項の一部が不適法である場合におこなう点が異なります。
登記事項の一部が不適法である場合には変更登記だけではなく更正登記というものもありますが、変更・更正登記のいずれも登記事項の一部が不適法であることが条件となります。
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利害関係人の承諾
抹消登記を申請する際に利害関係人の承諾書が必要になる場合があります。
例えば、所有権登記を抹消する場合であれば、所有権移転登記後に設定された抵当権者等が代表的な利害関係人となります。
利害関係人が存在する場合は承諾書を添付しなければいけません。
承諾書には実印を押印し、印鑑証明書の添付も要します。
よって、抹消登記をする際に利害関係人が存在する場合は、利害関係人から承諾書を入手できるかどうかが問題になります。
抹消回復登記とは
抹消回復登記というのは、登記の全部または一部が不適法に抹消された場合に、抹消された登記を回復して抹消時に遡って抹消がなかったと同じ効果を生じさせる登記のことです。
抹消登記では登記の全部または一部が不適法に抹消されたこと条件としているので、抹消登記が適法・有効になされたのであれば抹消回復登記を申請することはできません。
例えば、被担保債権の弁済により、抵当権が抹消されたような場合は当該抵当権が適法に抹消された以上、あとから抹消回復登記を申請することはできません。
抹消回復登記の際に利害関係人が存在する場合は、利害関係人の承諾書を添付しなければいけないのは、抹消登記の場合と同様です。
具体的な利害関係人の例としては、一番抵当権が抹消された後に二番抵当権を設定したような場合の二番抵当権者です。
このケースで、一番抵当権の抹消回復登記がおこなわれると、当初は一番の優先順位であったはずの二番抵当権者の優先順位が二番になってしまうからです。
利害関係人の承諾義務
通説や判例では登記上利害関係を有する第三者は、善意・悪意または回復登記によって受ける損害の有無・程度に関わらず、常に承諾義務を負うとされています。
これは、登記によって発生した対抗力は、適法な抹消がされない限り消失することはないとされているからです。
このため、抵当権の登記が抵当権者の知らない間に不適法に抹消されてしまっても、抵当権者は対抗力を失わず、当該抵当権者は抹消後に抵当権を取得した第三者に対して、抹消回復登記の申請に必要な承諾の意思表示を請求する権利を有します。
よって、承諾書の提出を求められた第三者は承諾書の提出に応じる義務があります。
もし、任意に応じない場合には裁判手続きを利用するほかありません。
実務上は、抹消登記は抵当権の抹消登記等で頻繁にありますが、抹消回復登記にはそうそうお目にかかることはありません。
過払い請求と抹消登記
債務整理の場面でも、抹消登記は不動産担保融資を受けている場合によくおこなわれます。
債務者が借金を完済した場合には貸金業者から抹消登記に必要な書類一式が交付されるので、それをもとに(根)抵当権の抹消登記をおこないます。
抹消登記は貸金業者がおこなってくれるものではないので、必要書類の交付を受けたら自分で抹消登記を申請するか、お近くの司法書士に依頼をすることになります。
当事務所でも抹消登記のご相談はよく受けておりますので、千葉県近郊にお住まいの方であれば、たとえ不動産が遠方であっても対応可能なので、お気軽にご相談ください。
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