遺言による認知と廃除
認知とは、嫡出でない子に対して、意思表示または裁判により親子関係を発生させる制度をいいます。
母子関係は、出産の事実によって明確であることがほとんどなので、認知が必要になるのは基本的に父子関係となります。
この認知には、意思表示によりおこなう任意認知と、裁判所が認定する強制認知に分けられます。
任意認知は、子の父が自らの意思でおこなうもので、戸籍上の届出によって効力を発生します。
また、遺言によって認知することも可能で、これを遺言認知といい、認知の対象となる子は以下のように4つに分類できます。
1. 未成年
2. 成年
3. 胎児
4. 死亡した子
なお、遺言は、遺言者の死亡のときから効力を生じ、認知は出生のときにさかのぼってその効力を発生するので、遺言認知をすることで、その子が出生したときから親子関係が生じていたことになるわけです。
もし、遺言書で遺言執行者が指定されていれば、就任日から10日以内に認知の届出をしなければならず、遺言執行者は、認知届出書と遺言書を市町村役場に提出します。
なお、成年の子を認知するには、本人の承諾が必要になるので、遺言執行者は認知の届出をする際に、本人の署名押印をもらう必要があります。
よって、もし、本人の承諾が得られなかった場合は、失効手続きは不能となり終了となりますが、後日の紛争防止のために、その成年の子から認知を承諾しない旨の確認書をもらっておくのが望ましいでしょう。
また、胎児の子を認知する場合には、その母の承諾が必要となるので、遺言執行者は認知届出書に母の署名押印をもらう必要があります。
なお、胎児が死産だった場合、遺言執行者はその事実を知ってから14日以内にその旨を届け出る必要があります。
最後に、死亡した子の認知ですが、そもそもこのケースでなぜ認知が必要になるのでしょうか。
それは、その死亡した子に直系卑属(子や孫)がいる場合、認知をすることで相続権等の利益が発生するため、たとえその子がすでに死亡していたとしても、遺言で認知する必要があるからです。
よって、すでに死亡している子を認知する場合は、その子に直系卑属がいる場合に限られ、もし、その直系卑属がすでに成年であれば、成年の子の認知に本人の承諾が必要になるのと同様、その直系卑属本人の承諾を要します。
次は、廃除です。
廃除とは、相続人の資格を当然に否定するほどの重大な事由はないものの、被相続人からすれば、その者に相続させたくないと考えるような非行があり、かつ、被相続人がその者に相続させたくない場合に、被相続人からの請求に基づいて家庭裁判所が調停または審判によって、相続権を剥奪する制度です。
この廃除の方法としては、被相続人が生前に自ら家庭裁判所に請求をする生前廃除と、被相続人が遺言によって廃除を求める遺言廃除の2つがあります。
遺言廃除された場合、遺言執行者は、相続開始後遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければいけません。
申し立てをする裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
もし、廃除の審判が確定すれば、その推定相続人は相続権を失い、遺言執行者は、新版確定日から10日以内に届け出なければいけません。
なお、被相続人は、遺言で廃除の取り消しをすることもでき、その場合は、廃除の効果は遡って消滅し、被廃除者は相続人の地位を回復します。
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