自動車の強制執行手続き
登録を受けた自動車の所有権の移転やその自動車に対する抵当権の設定・変更は、登録をしないと第三者に対抗することができません。
自動車は本来は動産ではありますが、登録された自動車については、自動車抵当法が規定する大型特殊自動車を除き、登録が権利の得喪の対抗要件とされています。
そのため、差押えが可能であり、登録自動車に対する強制執行は不動産執行に準じた手続きでおこなわれます。
具体的な執行方法は、道路運送車両法の規定により最高裁判所に委任されています。
なお、自動車抵当法2条但し書きに規定する大型特殊自動車は、建設機械執行の対象になるので、自動車執行の対象からは外れます。
また、軽自動車や登録することができるが未登録の自動車等は動産執行の対象になります。
自動車のような移動性の高い物に対する強制執行は、どこの裁判所に管轄があるかが問題となりますが、自動車は船舶執行のように所在地主義を採用せず、その自動車の自動車登録ファイルに記載されている使用の本拠の位置を管轄する地方裁判所に管轄があります。
よって、自動車に対する強制執行の申立書には、当該自動車の登録事項証明書を添付する必要があります。
これにより、当該自動車の本拠の証明、当該自動車の所有名義人が債務者であることの証明および抵当権設定の有無を確認することができます。
なお、自動車執行では4000円の申立手数料の他に、10万円程度の予納金が必要になるので、事前に裁判所に確認しておく必要があります。
自動車執行の開始決定が出ると、裁判所から陸運支局に差押えの登録が嘱託され、その後、債務者に開始決定が通知されます。
差押債権者は、開始決定後、直ちに執行官に対して、自動車引渡執行の申し立てをしなければいけません(もし、差押債権者が当該自動車を保管している場合も同様です)。
なお、執行官は、相当と認めるときは、当該自動車を自ら保管しないで、差押債権者もしくは債務者、その他第三者に保管させることができます。
また、営業上の必要その他の相当な事由があるときは、債務者または当該自動車の用益権者(賃借人等)の申し立てで、運行の許可をすることができます。
もし、開始決定から1ヶ月を経過しても、執行官が自動車を取り上げることができないときは、裁判所は、強制競売の手続きを取り消さなければいけません。
この取消決定が確定すると、差押の登録の抹消を陸運局に嘱託することになり、その費用は差押債権者の負担となりますが、登録免許税は不要です。
当該自動車を第三者が占有していて、その者が任意に執行官に引き渡さないと、執行官保管とならないため、強制競売の手続きは取り消されます。
しかし、差押の登録後に第三者が占有した場合は、動産に準じ、差押債権者の申し立てにより、その第三者に対し、自動車を執行官に引き渡すよう命令が出されます。
この申し立ては、第三者が当該自動車を占有していると知ったときから1週間以内にする必要があります。
差押えの効力が生じた場合、裁判所は配当要求の終期を定め、これを公告し、かつ、差押の登録前に登録された仮差押債権者、抵当権者等に催告します。
合わせて、裁判所は評価人に評価命令を発し、評価人は財団法人日本自動車査定協会等に依頼して、当該自動車の評価書を作成し、公開されます。
裁判所は、評価書の提出を受けて、当該自動車の売却基準価額を定めますが、不動産執行と同様に、売却基準価額からその10分の2に相当する額を控除した価額です。
差押債権者の債権に優先する抵当権者や手続費用に配当したり、差押債権者が配当を受ける見込みがない場合には、いわゆる無剰余執行の禁止となり、所定の期間内に差押債権者が買受けの申出等をしないと、自動車執行は取り消されるので注意が必要です。
換価手続は、入札や競り売りの他、特別売却命令や差押債権者への売却も認められていますが、不動産のような期間入札は導入されていません。
入札の結果、買受申出があれば、売却不許可事由がない限り、売却許可決定が出されます。
なお、自動車は期間の経過とともに、その価値が下がるので、差押債権者の買受申出により、その者に売却許可をすることができますが、これを自動車譲渡命令といいます。
強制競売の申し立てと同時に、合わせて譲渡命令の申立てもすることができますが、その場合でも買受可能価額以上である必要があります。
差押債権者の譲渡命令を認めるかどうかは、裁判所の裁量次第なので、入札等でより高値が売れそうであれば認められないと思われます。
売却許可決定が確定すれば、その後1ヶ月以内に代金を納付しなければならず、その後、裁判所から陸運局に所有権移転の登録が嘱託されます。
なお、債権者への配当手続きが必要な場合は、不動産執行と同じ手続で配当が実施されます。
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