不動産執行の配当手続き

不動産執行手続きにおける配当について説明します。

 

裁判所は、売却代金が納付されると、その代金を債権者に分配するために配当期日もしくは弁済金交付の日を定めます。

 

なお、配当期日とは、債権者が複数いる場合の手続きなので、債権者が複数いて、売却代金で各債権者の債権の全額を弁済できない場合に配当手続きが実施されます。

 

これに対して、債権者が1人しかいなかったり、または債権者は複数いるが売却代金で各債権者の債権及び競売手続きにかかった費用の全額を弁済できる場合は弁済金交付手続きとなるわけです。

 

この2つの手続きの大きな違いは、配当異議の申し出ができるかどうかという点です。

 

これはどういうことかというと、配当手続きでは、配当期日に各債権者もしくは所有者(債務者)は、他の配当を受ける各債権者の配当額について異議の申出ができるのですが、弁済金交付の場合は、あくまでも弁済金が債権者に交付されるだけの手続きであり、配当期日のような異議を申し立てることができないということです。

 

なお、いずれの手続きも代金が納付されてから原則として1ヶ月以内におこなわれます。

 

配当期日の場合、配当を受けることになる各債権者及び債務者(所有者)を裁判所に呼び出すことになりますが、弁済金交付手続きの場合は、各債権者及び所有者にその旨が通知されるに過ぎません。

 

配当期日等が定められたときは、裁判所から各債権者に対して、債権額を記載した計算書を1週間以内に提出するように催告されますが、債権計算書は裁判所から送られてくるので、その書式を用いて記入すればOKです。

 

ところで、強制執行の申し立てをした債権者が、あらかじめ申立書において、請求額の一部請求である旨を記載して申し立てをしていた場合に、債権計算書作成の段階で、残りの金額を含めて配当を求めた場合に認められるかどうかという問題があります。

 

これについては、強制競売の場合であろうと、担保不動産の競売の場合であろうと、認められないというのが実務上の取り扱いです。

 

各債権者からの債権計算書が提出されると、裁判所はそれをもとに配当表を作成し、不動産の売却代金の金額以外に、各債権者の請求額の内訳、執行に要した費用の額、配当の順位とその額が記載されています。

 

弁済金交付手続きで作成される弁済金交付計算書も、記載内容は配当表に沿ったものになっています。

 

では、債権者がこの債権計算書を提出しない場合はどうなるかをみていきます。

 

まず、抵当権等の担保権を有している債権者についてですが、民事執行法上、抵当権等を有する債権者が債権の届出をしないからといって、配当を受ける権利がなくなるという規定はありません。

 

抵当権であれば登記上の債権額、根抵当権であれば極度額を基準に、債権が存在しているものとして取り扱うことになります。

 

もし、実体上、被担保債権が弁済などにより、すでに消滅しているような場合は、その他の債権者からの配当異議の申出や配当異議訴訟等により解決されることになります。

 

仮差押えの債権者が、債権計算書の届出をしない場合、抵当権などの担保権のように登記上の記載によって債権額が明らかにならないので、裁判所は仮差押を出した裁判所から当時の記録を取り寄せるなどしたり、当時の決定書の送付を求めるなどして債権額を記載することになります。

 

次に、配当額などに不服がある場合の手続きについてみていきます。

 

もし、配当表に記載された各債権者の債権もしくは配当額に不服がある場合、配当期日に出頭したうえで配当異議の申出をしなければいけません。

 

この点、配当期日に出頭しないで、書面だけで配当異議の申出をしても、通常の民事裁判のように陳述したものとみなす制度(擬制陳述)がないので注意が必要です。

 

配当異議の申出をする際は、どの点に異議があるのか(たとえば、どの債権者の配当額をそのくらい減額するのか)は記載する必要がありますが、その理由を記載する必要はありません。

 

もし、配当異議の申出をしなかった一般債権者は、その後、配当を受けた債権者に対して、不当利得返還請求を権をすることはできないというのが最高裁の考えなので、配当に異議があるのであれば、配当期日に配当異議の申出をしておく必要があります。

 

配当異議の申出は、債権者からだけではなく、債務者からも申し出ることができます。

 

もし、債務者が配当異議の申出をして、その配当異議の相手が抵当権者や債務名義の正本を有しない債権者であれば、債務者は、配当期日から1週間以内に配当異議の訴えを提起したことを書面で証明しなければいけません。

 

もし、訴訟提起の証明をした場合、裁判所は当該債権者に対する配当額を供託しますが、期間内に配当異議の訴えが提起されなかった場合は、配当異議の申出は取り下げたものとみなされ、予定どおり当該債権者に配当額が交付されます。

 

これに対し、配当異議の相手が、執行力ある債務名義の正本を有する債権者の場合、配当異議の申出をした債務者は、配当期日から1週間以内に請求異議の訴えもしくは民事訴訟法117条1項の訴えを提起したことの証明及びその訴えに係る執行停止の裁判の正本を提出する必要があります。

 

これは、執行力のある債務名義の正本を有する債権者が相手の場合、債務名義の執行力を停止しなければいけないからです。

 

なお、期間内に上記証明がなされない場合は、配当異議の申出が取り下げたものとみなされるのは同様です。

 

これに対し、債権者が配当異議の申出をした場合は、その相手方が債務名義を持っていようがいまいが、配当異議の訴えを提起しなければなりませんが、債務者の配当異議の場合と異なり、執行停止の裁判は不要です。

 

最後に、弁済金交付手続きにおいて、配当異議を申し出ることが可能かどうかという点がありますが、弁済金交付手続きでは、債権者が何人であっても売却代金でその債権全部の弁済を受けることができるので、債権者側からの配当異議の申出は認められません。

 

これに対し、債務者が各債権者の債権額もしくは配当額に不服があれば、配当異議の申出を認めてもよさそうではあるが、実務上は認めない取り扱いのようです。

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