準備金を資本に組み入れる手続き
資本金とは、会社の財産を確保するための基準となる金額で、株式会社は少なくとも資本金に相当する財産を保有しなければいけません。
これは、会社の債権者にに対する責任財産を確保するためです。
なお、旧商法では、株式の発行価額の2分の1を超えない額を資本に組み入れずに、資本準備金として積み立てることを認め、毎決算期の利益処分金の10分の1以上を利益準備金として積み立てることが義務づけられてきました。
そして、これらの法定準備金は取締役会の決議によって資本に組み入れることができました。
また、定時株主総会の決議による配当可能利益の資本組み入れの方法による資本金の額の増加の手続きも認められていました。
これに対して、会社法における設立時の資本金の額は、原則として株主となる者が払込み(または給付)をした財産の額となります。
資本に組み入れる額についても、払込み(または給付)に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上せず、資本準備金とすることができます。
なお、準備金とは、将来、会社が被るかもしれない損失に備えて、あらかじめ積み立てておくものです。
準備金には、法律の規定によって積み立てることを要する法定準備金と、会社が任意に積み立てる任意準備金があります。
これに対して、剰余金とは、原則として、資産の額と自己株式の帳簿価額の合計額から負債の額と資本金及び準備金の額の合計額とその他法務省令に定める各勘定科目に計上した額の合計額を減じて得た額をいいます。
純資産額が300万円以上である会社は、株主総会の決議によって剰余金の配当をすることができ、金銭その他の財産を配当財産とすることができます。
そして、株式会社では、資本金、準備金または剰余金の計数を変動させることが可能です。
会社法では、準備金または剰余金の額を減少して資本の額を増加させることができますが、その際は株主総会の普通決議で以下の事項を決定します。
1. 減少する準備金の額
2. 減少する準備金の額の全部または一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額
3. 準備金の額の減少がその効力を生ずる日
ただし、準備金の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く)には債権者保護手続きが必要となります。
具体的には、
1. 当該準備金の額の減少の内容
2. 会社の計算書類に関する事項
3. 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告をします。
ただし、定時株主総会において準備金の額のみの減少を決議した場合で、減少する準備金の額が当該定時株主総会の日における欠損の額を超えないときは、債権者保護手続きは不要です。
会社は、準備金の資本組み入れにより資本金の額に変更が生じたときは、2週間以内に登記をしなければいけません。
登記の事由は、「準備金の資本組み入れによる資本金の額の変更」で、登記すべき事項は増加後の資本金の額及び変更年月日となります。
添付書面は、株主総会議事録、減少に係る準備金の額が計上されていたことを証する書面で、具体的には、代表者の作成した証明書がこれに該当するものと解されています。
登録免許税は、増加した資本金の額の1000分の7です。
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