仮執行宣言付支払督促とは
支払督促では、債務者に支払督促が送達されてから2週間の間に、債務者から異議が出なければ、仮執行宣言の申し立てをすることができます。
仮執行宣言とは支払督促に執行力を付与する裁判のことです。
つまり、支払督促は仮執行の宣言が付され、それが債務者に送達されることによって、その確定を待たずに執行力が生じて債務名義になるので、仮執行宣言付支払督促が債務者に届いた後は、債権者は執行文の付与を要せずして、債務者に対して強制執行をすることができるということです。
この仮執行宣言ですが、債務者に支払督促が送達されてから2週間が経過したときから30日以内に申し立てをする必要があります。
裁判所書記官は、仮執行宣言の申し立てが適法であり、かつ、仮執行宣言の要件が備わっていれば、仮執行宣言を発します。
なお、債権者は、仮執行宣言の申し立てに担保を提供する必要はありません。
仮執行宣言がなされると、書記官は直ちに仮執行の宣言を記載した支払督促の正本を作成して、それを債権者と債務者双方に送達します。
もし、債務者の転居先不明等で仮執行宣言付支払督促を送達できない場合は、書留郵便に付する送達ができるので、「転居先不明」や「あて所に尋ねあたらず」の理由で債務者に送達できなくても、常に発送のときに送達があったものとみなされるということです。
よって、債務者が故意に仮執行宣言付支払督促の受け取りを拒否したり、転居しても効力は発生します。
ここで、紛らわしいのは、支払督促の申し立ては、債務者が転居先不明等で送達できなければ、その効力を発しませんが、仮執行宣言付支払督促の送達については、当初の支払督促の送達とは異なり、債務者が転居先不明で送達できなくても、付郵便送達で効力を発するという点です。
これは、支払督促が債務者に送達された以上、その後の手続きである仮執行宣言がなされることは債務者も予想できるので、債務者保護の点でも問題ないからです。
支払督促に仮執行の宣言が付されると、その支払督促は、債権者への送達により確定を待たずに執行力が生じ、債務名義となり、強制執行については原則執行文の付与を要しません。
そして、仮執行宣言付支払督促が債務者に送達されてから2週間以内に債務者が督促異議を申し立てない場合は、その支払督促は確定判決と同一の効力を有するようになります。
なお、確定判決と同一の効力を有するといっても、支払督促が債権者の主張事実の存否について実体的な判断をしたわけではないので、確定判決と同一の効力の中には執行力は含まれますが、既判力は含まれません。
この点、旧民事訴訟法では、確定した仮執行宣言付支払督促には、裁判としての既判力が認められていたので、その成立の瑕疵を争うためには再審によらざる得ませんでしたが、新民事訴訟法では、支払督促は裁判ではなくなったので、再審ではなく、請求異議訴訟で争うことになります。
また、仮執行宣言付支払督促は、執行文の付与を要しませんが、もし、宣言後に債権者もしくは債務者に相続等による承継があった場合は、承継執行文の付与は必要です。
最後に、仮執行宣言付支払督促の再度または数通付与です。
1つの強制執行で債務名義上の金額を全額回収できそうにない場合は、数個の強制執行を同時にすることもあります。
また、支払督促自体を紛失したような場合は、裁判所に再度又は数通付与の申し立てをすることで仮執行宣言付支払督促を入手できますが、その場合、書記官は債務者に対し、その旨を通知します。
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