抵当権設定の手続き

抵当権は、特定の債権を担保するために設定されるものですが、抵当権によって担保される債権(これを「被担保債権」という)については、特に制限は設けられていないので、一般的な金銭債権に限らず、実務上も多くはありませんが物の引渡債権でも構いません。

 

また、現に存在する債権だけでなく、将来の債権であっても発生の可能性が法律上存在するのであれば、当該債権を被担保債権として抵当権を設定することが可能です。

 

抵当権は被担保債権が弁済等により消滅すれば、その付従性により抵当権も消滅しますが、付従性があるとはいっても抵当権設定当時に被担保債権が存在していることを要求しているわけではなく、将来的に被担保債権の発生する可能性があればよいからです。

 

実務上、将来発生する可能性のある債権を担保する場合の抵当権としては、銀行から住宅ローンを借りた際に銀行等から委託を受けた保証会社が将来、債務者に代わって弁済した場合に取得することになる求償債権を担保する場合がありますが、この場合の原因日付の記載方法は、「年月日保証委託契約による求償債権年月日設定」となります。

 

また、債権額の一部だけを担保する抵当権を設定することも可能です。

 

たとえば、1億円借入れしたけれども抵当権で担保するのはその半分の5000万円だけという場合、登記原因を「年月日金銭消費貸借金1億円のうち金5000万円年月日設定」とし、登記される債権額は5000万円とします。

 

ここで注意を要するのは、抵当権には不可分性があるので、債務者が債権者に4000万円を返済しても、抵当権で担保される金額は5000万円で変わらないというところです。

 

次に、同一の債権者が異なる債務者に対する債権を被担保債権として1個の抵当権を設定することができるかどうかですが、これについては原因日付を「(あ)年月日金銭消費貸借 (い)年月日金銭消費貸借 年月日設定」、債権額を「金〇〇〇万円 内訳 (あ)金〇〇〇万円 (い)金〇〇〇万円」、利息を「(あ)何% (い)何%」、債務者を「(あ)何某 (い)何某」といったように(あ)、(い)といった符号を用いることで登記可能です。

 

これに対し、債権者が異なる場合は、1個の抵当権を設定することはできません。

 

これは、抵当権が自己の有する被担保債権を担保するために設定するもので、他人の被担保債権を担保するために抵当権を設定することはできないからです。

 

もし、同一の債務者に対して異なる債権者が抵当権を設定したいのであれば、それぞれの抵当権を同順位にしたうえで別々の抵当権を設定する必要があります。

 

これと混同しやすいケースとして、債権者が複数でもその債権を準共有している場合です。

 

実務上でも珍しいですが、債権を準共有する抵当権者が2名以上の場合、原則的にその持分を登記しなければいけませんが、この場合は各債権額という形式で登記しても構わないとされています。

 

次は、利息についてですが、一般的にサラ金業者等が不動産を担保に貸付けをおこなう場合は、抵当権ではなく根抵当権にしている場合がほとんどです。

 

根抵当権においては極度額は登記事項ですが、利息に付いては登記事項とはされていません。

 

これに対し、抵当権では利息も登記事項とされているのですが、昔は貸金業者が利息制限法を超える高金利で貸付けをおこなっていることがほとんどでしたが、抵当権を設定する際には利息制限法を超える利息や損害金を登記することはできません。

 

これは、利息制限法が強行法規であり、制限部分を超える定めをしても絶対的に無効とされているからです。

 

よって、仮に、抵当権設定契約書に利息制限法を超える利息の定めが記載されている場合には、申請書には制限利率に引き直した利息を記載したうえで抵当権設定登記を申請する必要があったわけです。

 

最後に取扱支店の表示ですが、全国に多数の支店がある金融機関であれば、取扱支店を登記することができますが、たとえ全国に支店を有する株式会社であっても金融機関でない限りは取扱支店を登記することはできません。

 

また、信用保証協会、信用組合、信用金庫についても取扱支店の表示はできないとされていますが、これはこれらの金融機関は一定の地域に限られており、全国に支店を有する金融機関とはいえないからです。

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