根抵当権の元本確定

根抵当権の元本確定とは?確定事由や元本確定登記の解説

根抵当権は抵当権と異なり、設定段階では根抵当権が担保する元本債権が特定されていません。

しかし、根抵当権では以下の事由が発生した時に元本が確定します。

元本確定事由

1. 確定期日の到来

2. 相続開始後6ヶ月以内に合意の登記をしなかった場合

3. 合併または会社分割がなされたことにより設定者が確定請求をした場合

4. 根抵当権の設定者が確定請求をした場合

5. 根抵当権者が確定請求をした場合

6. 根抵当権者が競売等を申し立てた場合

7. 根抵当権者の滞納処分による差押えがあった場合

8. 第三者の申し立てによる競売手続きの開始等があった場合

9. 債務者または設定者が破産手続開始決定を受けた場合

根抵当権は、元本が確定することで、その後に発生する元本債権が、その根抵当権で担保されなくなります。

つまり、元本が確定した時に存在する元本債権および利息、損害金とその後にその元本債権から発生する利息、損害金が極度額を限度として担保されることになります。

そして、元本確定によって根抵当権の被担保債権が特定し、その結果、被担保債権に対する付従性、随伴性が生じます。

付従性と随伴性が生じると被担保債権が譲渡されれば根抵当権も譲受人へ移転することになり(随伴性)、被担保債権が全額弁済されれば根抵当権が消滅します(付従性)。

元本確定事由の中に、相続開始後6ヶ月以内に合意の登記をしなかったときとありますが、これは根抵当権者もしくは債務者について相続があった場合に、その6ヶ月以内に指定根抵当権者もしくは指定債務者の合意の登記をしないと、相続開始のときに元本が確定したものとみなされるというものです。

これにより、根抵当権者もしくは債務者の相続人は、相続があれば元本を確定させることができるわけです。

設定者からの確定請求も認められています。

ただし、設定者から確定請求できるのは、設定から3年を経過している場合で、その請求のときから2週間が経過したときに元本が確定します。

これは、根抵当権がその債権の範囲に属する債権であれば、そのすべてを担保することになるので、根抵当権が無期限で存続すると設定者に不利益になる場合があるからで、特に物上保証人の保護を図るためです。

設定者が複数人である場合には、確定請求が必ずしも設定者に有利になるとは限らないので、設定者全員からしなければいけないとされてます。

これに対し、設定者のことなる共同根抵当権が設定されている場合は、その中の1つの不動産の所有者から確定請求を行うことができるとされています。

根抵当権者からの確定請求については、設定者の場合のように3年の要件はなく、確定も請求時とされています。

もし、設定者が共有で複数人いれば、その全員に対し確定請求をしなければならず、共同根抵当で設定者が複数人いれば、その全員にしなければいけません。

債務者もしくは設定者が破産手続開始決定を受けた場合も元本が確定しますが、これは破産手続きにおける債権者平等の原則に基づきます。

設定者が複数の場合、そのうちの1人が破産手続開始決定を受ければ、もはや、当該根抵当権を利用した取引が不可能ないし困難であるのは間違いないので元本が確定するとされています。

元本が確定した場合は原則的に元本確定登記をすることになります。

元本が確定した後でなければできない登記をするような場合には、登記上元本が確定していることを公示する必要があるので、その前提として元本確定登記をしなければいけません。

ただし、元本確定が登記上明らかであれば、元本確定登記をしなくても、元本確定後でなければできない登記を申請することができるとされています。

元本確定後でなければできない登記には、債権譲渡や代位弁済を原因とする根抵当権の移転登記、免責的債務引受を原因とする変更登記、弁済による抹消登記等がありますが、これらの登記をするには、登記上、元本が確定していることが明らかでない限りは、元本確定登記をしなければいけません。

これに対して、極度額の変更や相続または合併による根抵当権の移転登記は、元本確定の前後を問わず申請できるので、その前提として元本確定登記は不要です。

元本確定登記の申請は、原則的に設定者を登記権利者、根抵当権者を義務者とする共同申請でおこないます。

これは、元本が確定することにより、確定後の取引により発生した債権は、その根抵当権で担保されなくなるので、設定者に有利といえるからです。

登録免許税は、不動産1個につき1000円とされています。

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